急性毛球症、痙攣症状が併発した例

昨日、急に元気がなくなり、食欲不振となったウサギが来院しました。
体温は39.9℃、心拍および呼吸数は正常範囲内であり、口腔内の検査でも異常は認められませんでした。

触診にて胃の膨満が確認され、レントゲン検査でも胃の拡張が確認されたため、急性毛球症と診断し、対応処置を行ったうえで帰宅していただきました。
なお、左前肢においてプロピオセプション(位置感覚)のやや低下が見られましたが、気の弱いウサギでは環境の変化により一時的に生じることもあるため、経過観察としました。

翌日、再度来院されました。飼い主によると、前日の午後7時・9時・深夜0時前の計3回、痙攣様の症状が確認されたとのことです。過去4年間の飼育歴において、痙攣は一度もなかったとのことでした。

このため、ステロイド剤を追加して治療を継続しました。

その後3日目の来院時には、元気および食欲ともに回復がみられました。

急性毛球症は、胃内に形成された毛玉が幽門部で嵌頓し、胃の出口を閉塞させることで発症します。また、基礎疾患を有するウサギでは、急性毛球症を発症しやすい傾向にあります。当院の臨床経験では、約20例に1例程度の割合で重症化し、死亡に至ることもあります。

今回の症例では、「痙攣」が認められたことから低血糖の可能性、ならびに左前肢のプロピオセプション低下から軽度の脳障害の可能性も考慮されましたが、基礎疾患の特定には至りませんでした。

この記事を書いた人

鈴木 透

獣医師