うちの犬がチョコを食べちゃった!焦って駆け込んだダックスフンドのケース|診断カルテ

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「お風呂から出たら、板チョコがかじられていた…」

ある日の夜、飼い主さんが入浴を終えてリビングに戻ると、テーブルの上に置いてあった板チョコが袋ごと破られていました。
犯人は2歳・体重約5kgのダックスフンド。
食べた量は板チョコ(50g)の2〜3割程度。
驚いた飼い主さんは、そのまま時間外診療で当院に駆け込まれました。

チョコレートが犬に危険な理由

チョコレートには テオブロミン という成分が含まれています。
人では約6時間で半分が分解されますが、犬は約17.5時間もかかり、体内に長く残ります。
このため、少量でも体調を崩すことがあり、中毒症状が出ることがあります。

チョコレート中毒の症状

摂取後 6〜12時間で以下の症状が現れることがあります。

・嘔吐・下痢
・落ち着きがない(活動過剰)
・頻尿
・足元がふらつく(運動失調)
・痙攣
・重症では心不整脈や呼吸不全で死亡することも

来院時の判断

今回のケースでは、

・摂取から来院まで 1時間以上経過
・体重5kgの犬が板チョコ50gのうち 10〜15g程度を摂取
・メーカー確認のテオブロミン量は100gあたり350mg → 摂取量は約35〜52.5mg
・計算上、軽度の中毒症状域以下であった

以上を踏まえ、催吐処置や胃洗浄は行わず、自宅での経過観察としました。

経過とその後

後日、飼い主さんから「元気に過ごしている」と連絡をいただきました。
犬は大量に食べた場合でも、体が嘔吐して排出することがありますが、過信は禁物です。

他院であった死亡例

別の病院では、お祝いでもらったチョコを大量に食べてしまい、命を落としたケースも報告されています。
特にビターチョコや製菓用チョコはテオブロミン含有量が高く、少量でも危険です。

誤食時の対応ポイント

1時間以内なら催吐処置が有効(自宅で無理に吐かせるのは危険)
・胃洗浄は全身麻酔が必要で、動物では賛否あり
・活性炭投与で吸収を抑える場合もある
・テオブロミンの解毒薬は存在しないため、対症療法が中心

予防のために

・チョコやお菓子は犬の届かない場所に保管
・バレンタインや来客時は特に注意
・家族や友人にも「犬はチョコ厳禁」と周知する

獣医師からのメッセージ

チョコレートは人間にとっては甘いおやつですが、犬にとっては命を脅かす毒になり得ます。
もし誤食した場合は、種類・量・食べた時間を控えて、すぐに動物病院へご連絡ください。
「元気そうだから大丈夫」と思っても、時間が経ってから症状が出ることがあります。

当院では、犬の中毒症例(チョコレート・玉ねぎ・キシリトールなど)の診断と緊急対応を行っています。
「食べてはいけないものを口にしたかも…」というときは、すぐにご相談ください。

この記事を書いた人

鈴木 透

1959年生まれ。 1984年に北里大学獣医畜産学部獣医学科を卒業。学生時代から動物の病気や治療に強い関心を持ち、獣医師としての知識と技術を深めるべく、1986年には同大学大学院獣医畜産学部獣医学専攻を修了。大学院では小動物の臨床研究に携わり、実践的な診療スキルと基礎医学の両面から専門性を高めた。 その後、日本獣医生命科学大学にて研究生として在籍し、さらに高度な専門知識と研究経験を積む。臨床現場と学術の両方での経験を活かし、1991年、地域に根ざした獣医療を提供するために「オダガワ動物病院」を開設。以降、30年以上にわたり、飼い主と動物の信頼関係を大切にした診療を心がけ、多くの症例と向き合ってきた。