
愛猫の健康を守る上で、腎臓病は飼い主が最も注意すべき疾患のひとつです。猫は他の動物と比較して腎臓病にかかりやすく、特に高齢になるにつれてそのリスクは格段に高まります。実際、10歳以上の猫の約3分の1が何らかの腎臓の問題を抱えているという統計もあり、決して他人事ではありません。
猫の腎臓病は初期段階では症状が現れにくく、気づいたときにはすでに進行していることが多い「サイレントキラー」とも呼ばれる病気です。しかし、早期発見と適切な管理により、愛猫の生活の質を維持しながら病気の進行を遅らせることは十分に可能です。
この記事では、猫の腎臓病について基礎知識から最新の治療法まで、飼い主が知っておくべき情報を包括的に解説します。愛猫の健康を守るために、ぜひ最後までお読みください。
猫の腎臓病(腎不全)って何?|高齢猫で増える病気

腎臓病の基本的な病態と定義
猫の腎臓病とは、腎臓の機能が低下し、体内の老廃物を十分に排出できなくなった状態を指します。腎臓は体内の水分バランスを調整し、有害な物質を尿として体外に排出する重要な臓器です。また、血圧の調節や赤血球の産生を促すホルモンの分泌、骨の健康に関わるビタミンDの活性化なども担っています。
腎臓病が進行すると、これらの機能すべてに支障をきたし、最終的には生命に関わる深刻な状態となります。腎臓の組織は一度損傷を受けると元に戻ることが難しく、残存する健康な腎組織で機能を補わなければならないため、病気の進行とともに症状も悪化していきます。
急性腎障害と慢性腎臓病の違い
猫の腎臓病は大きく急性腎障害と慢性腎臓病の2つに分類されます。
急性腎障害は、数日から数週間という短期間で急激に腎機能が低下する状態です。原因として、中毒物質の摂取、重度の脱水、感染症、薬物の副作用、尿路の閉塞などが挙げられます。適切な治療により回復する可能性がありますが、治療が遅れると生命に関わる危険な状態となります。
一方、慢性腎臓病は数か月から数年をかけてゆっくりと進行する病気です。多くの場合、原因を特定することは困難で、加齢に伴う腎組織の劣化や、長年にわたる軽微な損傷の蓄積が背景にあると考えられています。慢性腎臓病は完全に治癒することは困難ですが、適切な管理により進行を遅らせ、猫の生活の質を維持することが可能です。
なぜ猫は腎臓病になりやすいのか
猫が他の動物と比較して腎臓病になりやすい理由には、いくつかの生物学的特徴があります。
まず、猫は砂漠の動物を祖先に持つため、水分摂取量が少なくても生存できるよう進化してきました。この特徴により、猫の腎臓は非常に濃い尿を作る能力に長けていますが、同時に腎臓への負担も大きくなります。長年にわたってこの高い濃縮機能を維持することで、腎組織に微細な損傷が蓄積されやすくなります。
また、猫の腎臓の構造的特徴も影響しています。猫の腎臓は人間や犬と比較して、血流の調節機能がより複雑で繊細なため、わずかな血流の変化や毒性物質の影響を受けやすい傾向があります。
さらに、現代の室内飼育環境も要因のひとつとして考えられています。運動不足や肥満、ストレス、不適切な食事などが腎臓に慢性的な負担をかけ、病気の発症リスクを高める可能性があります。
遺伝的要因も無視できません。特定の品種では腎臓病の発症率が高いことが知られており、ペルシャ猫やアビシニアン、メインクーンなどでは遺伝性の腎疾患が報告されています。
猫の腎不全の主な症状|早期に気づきたいサインとは

多飲多尿と脱水症状:最も重要な初期症状
猫の腎臓病で最も特徴的で重要な初期症状が、多飲多尿です。健康な猫の1日の水分摂取量は体重1キログラムあたり20〜40ミリリットル程度ですが、腎臓病が進行すると50ミリリットルを超えることがあります。
多飲多尿が起こる理由は、腎臓の濃縮機能が低下することにあります。正常な腎臓であれば、体内の水分バランスを調整するため、必要に応じて濃い尿を作ることができます。しかし、腎機能が低下すると尿を濃縮する能力が失われ、大量の薄い尿を作るようになります。その結果、体内の水分が失われやすくなり、猫は本能的に多くの水を飲むようになります。
飼い主が気づきやすいサインとして、水飲み場に行く回数が増える、水のボウルが早く空になる、トイレ掃除の頻度が増える、尿の色が薄くなるなどがあります。また、普段あまり水を飲まない猫が水道の蛇口から直接水を飲むようになったり、お風呂の残り湯に興味を示すようになったりすることもあります。
脱水症状も並行して現れることがあります。皮膚をつまんで離したときに元に戻るまでの時間が長くなる、歯茎が乾燥してべたつく、目が少しくぼんで見えるなどの症状が見られた場合は、すでに脱水が進行している可能性があります。
食欲不振・体重減少・元気の低下
腎機能の低下により体内に毒素が蓄積すると、猫は徐々に食欲を失っていきます。この症状は「尿毒症」と呼ばれる状態の一部で、血液中の尿素窒素やクレアチニンなどの老廃物が正常に排出されないことが原因です。
初期の段階では、好きな食べ物に対する嗜好が変化する程度ですが、病気が進行すると完全に食事を拒否するようになることもあります。特に、いつも喜んで食べていたドライフードを避けるようになったり、匂いを嗅いだだけで顔を背けるようになったりする行動が見られます。
体重減少は食欲不振と密接に関連しています。摂取カロリーが不足することで筋肉量が減少し、見た目にも痩せた印象を与えるようになります。特に背骨や肋骨が触りやすくなる、顔つきがシャープになるなどの変化が見られた場合は注意が必要です。
元気の低下も重要なサインです。普段活発だった猫が寝ている時間が長くなる、遊びに興味を示さなくなる、高い場所に登らなくなる、グルーミングの頻度が減るなどの変化が見られます。これらの症状は他の病気でも見られることがありますが、多飲多尿と組み合わせて現れた場合は、腎臓病の可能性を強く疑う必要があります。
嘔吐・口臭・貧血などの全身症状
腎臓病が進行すると、より深刻な全身症状が現れるようになります。
嘔吐は腎臓病の中〜後期に多く見られる症状です。体内に蓄積された毒素が消化器系に影響を与え、胃炎や食道炎を引き起こすことが原因です。特に早朝の空腹時や食後に嘔吐することが多く、黄色い胆汁や未消化の食べ物を吐くことがあります。慢性的な嘔吐は脱水を悪化させ、栄養状態をさらに低下させる悪循環を生み出します。
口臭の変化も重要なサインです。健康な猫の口臭は軽微ですが、腎臓病が進行すると特有の甘酸っぱい臭いやアンモニア様の臭いが強くなります。これは血液中の毒素が呼気に混じることが原因で、「尿毒症性口臭」と呼ばれます。また、口内炎や歯肉炎を併発することも多く、よだれが増える、口を気にする仕草を見せるなどの症状も伴います。
貧血は腎臓病の進行に伴って現れる深刻な合併症のひとつです。健康な腎臓は赤血球の産生を促すエリスロポエチンというホルモンを分泌しますが、腎機能が低下するとこのホルモンの産生も減少し、結果として赤血球の数が減少します。貧血の症状として、歯茎や舌の色が薄いピンク色や白っぽくなる、疲れやすくなる、息切れしやすくなるなどが見られます。
その他の全身症状として、被毛の艶がなくなりパサつく、体温の低下、便秘、筋肉の萎縮なども報告されています。これらの症状が複数組み合わさって現れた場合は、腎臓病がかなり進行している可能性があるため、早急な獣医師の診察が必要です。
診断の流れとIRISステージ分類|検査でわかること

血液検査:クレアチニン・BUN・SDMAの重要性
猫の腎臓病の診断において、血液検査は最も重要で基本的な検査です。特に、クレアチニン、BUN(血液尿素窒素)、SDMA(対称性ジメチルアルギニン)という3つの指標は、腎機能の評価に欠かせない項目です。
クレアチニンは筋肉で作られる老廃物で、健康な腎臓であれば効率的に尿中に排出されます。血液中のクレアチニン値が高いということは、腎臓の濾過機能が低下していることを示しています。猫の正常なクレアチニン値は一般的に0.8〜1.8mg/dLとされていますが、腎機能が正常の25%以下になるまで数値の上昇が見られないという特徴があります。つまり、クレアチニンの上昇が確認された時点で、すでに腎臓のかなりの部分が機能を失っている可能性があります。
BUNは肝臓でタンパク質が代謝される際に産生される尿素が血液中に含まれる量を示します。健康な腎臓であれば尿素は効率的に排出されますが、腎機能が低下すると血液中に蓄積されます。ただし、BUNは脱水や高タンパク質食、消化管出血などの影響も受けやすいため、単独での評価は困難で、必ずクレアチニンと併せて判断する必要があります。
SDMAは比較的新しい検査項目で、従来のクレアチニンやBUNよりも早期に腎機能の低下を検出できる指標として注目されています。SDMAは腎機能が正常の40%程度まで低下した段階で上昇を始めるため、より早期の診断が可能です。また、筋肉量や食事内容の影響を受けにくく、より正確な腎機能の評価ができます。
血液検査では、これらの指標に加えて、電解質(ナトリウム、カリウム、塩素)、リン、カルシウム、総タンパク質、アルブミンなども同時に測定し、腎臓病の進行度や合併症の有無を総合的に評価します。
尿検査:尿比重・蛋白尿の意義
尿検査は血液検査と並んで腎臓病の診断に重要な検査です。尿の性状を詳しく調べることで、腎機能の状態や病気の原因についてより多くの情報を得ることができます。
尿比重は尿の濃縮能力を評価する最も重要な指標です。健康な猫の尿比重は通常1.035以上で、脱水時には1.060を超えることもあります。腎機能が低下すると尿を濃縮する能力が失われ、尿比重は徐々に低下していきます。尿比重が1.035を下回る場合は腎機能の低下を疑い、1.020以下では重度の腎機能障害が考えられます。
実は、尿比重の低下は血液検査の異常よりも早期に現れることが多く、腎臓病のスクリーニング検査として非常に有用です。特に、多飲多尿の症状がある猫で尿比重が低い場合は、腎臓病の可能性が高いと判断できます。
蛋白尿の検出も重要な所見です。正常な腎臓では大きな分子である蛋白質は尿中にほとんど漏れ出しませんが、腎臓の濾過装置(糸球体)が損傷を受けると蛋白質が尿中に漏出するようになります。蛋白尿の程度により、腎臓の損傷の程度を推測することができます。
尿中の細胞成分(赤血球、白血球、細菌など)の検査も重要です。これらの所見により、感染症や炎症の有無、尿路系の他の疾患との鑑別診断に役立ちます。
尿検査を正確に行うためには、適切な尿の採取が必要です。最も理想的な方法は膀胱穿刺による採尿ですが、侵襲的な手技のため、通常は自然排尿による採尿が行われます。ただし、自然排尿の場合は細菌汚染の可能性があるため、結果の解釈には注意が必要です。
画像診断:超音波による腎臓構造の評価
超音波検査は猫の腎臓病の診断において、血液検査や尿検査では得られない構造的な情報を提供する重要な検査です。非侵襲的で猫への負担が少ないため、定期的な経過観察にも適しています。
超音波検査では、まず腎臓のサイズを評価します。慢性腎臓病が進行すると、腎臓は徐々に小さくなっていきます。正常な猫の腎臓の長さは体重1キログラムあたり約3センチメートルとされており、これより明らかに小さい場合は慢性腎臓病の可能性が高いと判断されます。
腎臓の形状や表面の状態も重要な観察ポイントです。慢性腎臓病では腎臓表面が凸凹になったり、皮質(外側の部分)が薄くなったりすることがあります。また、嚢胞や腫瘤の有無、水腎症の程度なども確認できます。
腎血流の評価も可能です。ドプラー超音波を使用することで、腎動脈の血流速度や血流パターンを観察し、腎血管の状態を評価することができます。血流の低下や異常なパターンが見られる場合は、腎機能への影響が考えられます。
超音波検査は腎臓病の原因究明にも役立ちます。先天性の腎疾患、多嚢胞性腎疾患、腫瘍、結石などの有無を確認することができ、これらの情報は治療方針の決定に重要な意味を持ちます。
IRISステージ1〜4の定義と意義
IRIS(International Renal Interest Society)ステージ分類は、世界的に標準化された慢性腎臓病の進行度評価システムです。血液中のクレアチニン値を主体として、ステージ1からステージ4まで分類され、治療方針や予後の判定に広く使用されています。
ステージ1は、クレアチニン値が1.6mg/dL未満で、腎機能はまだ正常範囲内にありますが、他の検査(尿検査や画像診断)で腎臓の異常が認められる段階です。この段階では症状が現れないことが多く、定期健康診断で偶然発見されることがほとんどです。早期発見により適切な管理を開始すれば、進行を大幅に遅らせることが可能です。
ステージ2では、クレアチニン値が1.6〜2.8mg/dLの範囲にあり、軽度の腎機能低下が認められます。多飲多尿などの症状が現れ始める段階で、飼い主が異常に気づくことが多くなります。この段階から積極的な治療介入が重要になります。
ステージ3は、クレアチニン値が2.9〜5.0mg/dLで、中等度の腎機能低下を示します。食欲不振、体重減少、嘔吐などの明らかな症状が現れ、生活の質に影響を与え始めます。内科的治療の強化が必要な段階です。
ステージ4では、クレアチニン値が5.0mg/dLを超え、重度の腎機能低下が認められます。尿毒症の症状が顕著になり、生命に関わる状態です。積極的な支持療法や緩和ケアが中心となります。
IRISステージ分類では、クレアチニン値に加えて、蛋白尿の程度(正常、境界域、蛋白尿)と血圧(正常、境界域高血圧、高血圧)も評価し、より詳細な病状把握と治療方針の決定を行います。この多面的な評価により、個々の猫に最適な治療プランを立てることが可能になります。
治療とケアの選択肢|猫の腎不全との向き合い方

食事療法:治療の基盤となる栄養管理
猫の腎臓病治療において、食事療法は薬物療法と並んで最も重要な治療の柱です。適切な食事管理により、腎臓への負担を軽減し、病気の進行を遅らせることができます。
腎臓病用の療法食の最も重要な特徴は、リン含有量の制限です。腎機能が低下すると、血液中のリン濃度が上昇し、これが二次性副甲状腺機能亢進症を引き起こし、腎臓病の進行を加速させます。療法食では、リン含有量を通常の食事の約半分に制限することで、この悪循環を断ち切ります。
ナトリウム(塩分)の制限も重要な要素です。過剰なナトリウムは高血圧を引き起こし、腎臓への負担を増加させます。療法食では、ナトリウム含有量を適切にコントロールすることで、血圧の上昇を抑制し、腎保護効果を発揮します。
タンパク質の質と量の調整も療法食の特徴です。従来は厳格なタンパク質制限が推奨されていましたが、近年の研究により、過度な制限は筋肉量の減少や栄養不良を引き起こす可能性が指摘されています。現在では、高品質で消化吸収の良いタンパク質を適量摂取することが推奨されており、腎臓への負担を最小限に抑えながら必要な栄養を確保することを目指しています。
オメガ3脂肪酸の強化も重要な特徴のひとつです。魚油に含まれるEPAやDHAなどのオメガ3脂肪酸には抗炎症作用があり、腎臓の炎症を軽減し、腎機能の保護に役立ちます。
療法食の導入タイミングは、一般的にIRISステージ2以降が推奨されますが、個体の状態や検査結果に応じて、より早期からの開始も検討されます。療法食への切り替えは急激に行わず、7〜10日間をかけて徐々に混合比率を変更し、消化器への負担を軽減することが重要です。
食事の嗜好性も重要な考慮点です。いくら優れた療法食でも、猫が食べてくれなければ意味がありません。複数のメーカーから様々な味や形状の療法食が発売されているため、愛猫の好みに合うものを見つけることが大切です。また、食事の温度を人肌程度に温めたり、香りの強いトッピングを少量加えたりすることで、食欲を促進する工夫も効果的です。
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水分補給:生命維持に不可欠な管理
腎臓病の猫にとって、適切な水分補給は生命維持に直結する重要な管理項目です。腎機能の低下により尿が濃縮できなくなった猫は、正常な猫よりも多くの水分を必要とします。
自発的な水分摂取を促進するための環境整備が第一歩です。新鮮な水を常時複数箇所に設置し、猫がいつでも飲めるようにします。水の容器は清潔に保ち、1日に最低1回は交換します。多くの猫は流れる水を好むため、循環式の給水器を使用することも効果的です。
水の温度も重要な要素です。多くの猫は室温よりもやや冷たい水を好む傾向があります。また、容器の材質にも配慮し、プラスチック製よりもステンレス製や陶器製の容器を好む猫が多いことが知られています。
食事による水分補給も重要な戦略です。ドライフードの水分含有量は約10%ですが、ウェットフードは約80%の水分を含んでいます。腎臓病の猫では、ウェットフード中心の食事に切り替えることで、大幅な水分摂取量の増加が期待できます。また、ドライフードにぬるま湯を加えてふやかして与えることも効果的な方法です。
自発的な水分摂取だけでは不十分な場合は、皮下補液による水分補給が必要になります。皮下補液は、皮膚の下に直接生理食塩水や乳酸リンゲル液を注入する方法で、脱水の改善と体内の老廃物の希釈効果があります。通常は動物病院で実施されますが、慣れた飼い主であれば自宅でも実施可能な場合があります。
皮下補液の頻度と量は、猫の状態や血液検査の結果に基づいて決定されます。軽度の場合は週に1〜2回、重度の場合は毎日実施することもあります。1回の補液量は通常50〜150ミリリットル程度で、猫の体重や脱水の程度により調整されます。
静脈内輸液は、より重篤な脱水や急性増悪時に実施される治療法です。皮下補液よりも迅速かつ確実に水分補給ができますが、入院での管理が必要になります。
薬物療法:症状緩和と進行抑制
猫の腎臓病に対する薬物療法は、症状の緩和と病気の進行抑制を目的として実施されます。使用される薬剤は多岐にわたり、猫の状態に応じて組み合わせて使用されます。
高血圧の管理は腎臓病治療において極めて重要です。腎臓病が進行すると高血圧を併発することが多く、高血圧は腎臓病の進行をさらに加速させる悪循環を生み出します。ACE阻害薬(エナラプリル、ベナゼプリルなど)は、血圧降下作用に加えて腎保護効果も期待できるため、第一選択薬として使用されます。カルシウム拮抗薬(アムロジピンなど)は、ACE阻害薬で血圧コントロールが不十分な場合に併用されます。
リン吸着剤は、血液中のリン濃度を下げるために使用される重要な薬剤です。腎機能の低下により体内にリンが蓄積すると、二次性副甲状腺機能亢進症を引き起こし、腎機能のさらなる悪化につながります。炭酸カルシウムやセベラマー塩酸塩などのリン吸着剤を食事と一緒に投与することで、腸管からのリンの吸収を抑制します。
貧血の治療には、造血促進剤が使用されます。エリスロポエチン製剤やダルベポエチン製剤は、腎臓で産生される造血ホルモンを補充し、赤血球の産生を促進します。ただし、これらの薬剤は高価で、定期的な投与が必要なため、重度の貧血がある場合に限って使用されることが多いです。
制酸剤や胃粘膜保護剤は、尿毒症による胃腸障害に対して使用されます。ファモチジンやオメプラゾールなどの制酸剤は胃酸の分泌を抑制し、胃炎や胃潰瘍の予防・治療に効果的です。スクラルファートなどの胃粘膜保護剤は、胃の粘膜を保護し、嘔吐や食欲不振の改善に役立ちます。
制吐剤は、慢性的な嘔吐に対して使用されます。マロピタントやメトクロプラミドなどが使用され、嘔吐の抑制により脱水の進行を防ぎ、栄養状態の維持に貢献します。
活性炭やクレメジンなどの腸管吸着剤は、腸管内で尿毒素を吸着し、体外への排出を促進する目的で使用されます。これらの薬剤により、血液中の毒素濃度を下げ、尿毒症症状の緩和が期待できます。
新しい腎保護薬:革新的な治療オプション
近年、猫の腎臓病治療において画期的な新薬が登場しています。その代表例が、ベラプロストナトリウム(商品名:ラプロス)です。
ベラプロストナトリウムは、プロスタサイクリンI2受容体作動薬と呼ばれる薬剤で、血管拡張作用、血小板凝集抑制作用、抗炎症作用などの複合的な効果により腎保護効果を発揮します。従来の治療薬とは異なる作用機序を持ち、腎血流の改善、糸球体内圧の低下、腎線維化の抑制などにより、腎機能の保護と病気の進行抑制が期待できます。
臨床試験では、ベラプロストナトリウムを投与された猫において、腎機能の悪化速度が有意に遅くなることが示されています。特に、IRISステージ2〜3の猫において効果が認められており、早期からの使用により長期的な腎機能の維持が期待できます。
この薬剤は錠剤として経口投与され、1日2回の投与が必要です。副作用は比較的軽微で、軽度の下痢や食欲不振が報告されていますが、多くの猫で問題なく使用できます。
ただし、ベラプロストナトリウムは比較的新しい薬剤であり、長期的な安全性や有効性についてはさらなるデータの蓄積が必要です。また、すべての猫に効果があるわけではないため、定期的な検査により効果を確認しながら使用することが重要です。
進行を遅らせるための生活習慣とホームケア

定期検査の重要性:病気の進行をモニタリング
腎臓病は進行性の疾患であり、定期的な検査による病状のモニタリングが治療成功の鍵となります。検査の頻度は病気の進行度により異なりますが、一般的にIRISステージ1〜2では3〜6か月ごと、ステージ3〜4では1〜3か月ごとの検査が推奨されます。
定期検査では、血液検査により腎機能指標(クレアチニン、BUN、SDMA)の変化を追跡し、電解質バランス、貧血の程度、その他の合併症の有無を確認します。これらの数値の変化により、治療効果の判定や治療方針の調整を行います。
尿検査も定期的に実施し、尿比重、蛋白尿、細菌感染の有無などを確認します。特に尿比重の変化は腎機能の悪化を早期に検出するのに有用で、血液検査の変化よりも先に異常が現れることがあります。
血圧測定も重要な検査項目です。高血圧は腎臓病の進行を加速させるため、定期的な血圧モニタリングにより適切な血圧管理を行います。猫の血圧測定は技術的に困難な面がありますが、専用の機器を使用することで比較的正確な測定が可能です。
体重測定は家庭でも実施できる重要なモニタリング項目です。急激な体重減少は病気の進行や脱水を示唆する重要なサインであり、早期の治療介入につながります。可能であれば、週に1回程度の体重測定を行い、記録を残すことが推奨されます。
適度な運動とストレス管理
腎臓病の猫にとって、適度な運動は血流改善や筋肉量維持の観点から重要ですが、過度な運動は腎臓に負担をかける可能性があるため、バランスが重要です。
理想的な運動は、猫が自然に行う程度の軽い活動です。おもちゃを使った遊びや、キャットタワーでの上下運動などが適しています。運動時間は1回10〜15分程度で、猫が疲労を示す前に終了することが大切です。
室内環境の整備も運動促進に重要です。適度な高さの段差やキャットタワーを設置し、猫が自然に運動できる環境を作ります。ただし、高齢の腎臓病猫では転落のリスクも考慮し、極端に高い場所は避ける配慮が必要です。
ストレス管理は腎臓病の進行に大きな影響を与える要因です。慢性的なストレスは血圧上昇や免疫機能低下を引き起こし、腎機能の悪化を加速させる可能性があります。
ストレス軽減のためには、静かで落ち着ける環境の提供が重要です。騒音を避け、猫が安心して休める場所を複数確保します。また、日常のルーチンを一定に保ち、環境の急激な変化を避けることも効果的です。
多頭飼育の場合は、猫同士の関係性にも注意を払います。社会的ストレスは腎臓病の進行に悪影響を与える可能性があるため、必要に応じて生活空間を分けるなどの配慮が必要です。
猫の飲水環境を良くする工夫
水分摂取量の確保は腎臓病の管理において極めて重要であり、飲水環境の改善により自発的な水分摂取を促進することができます。
水の設置場所を工夫することから始めます。猫は一般的に食べ物から離れた場所の水を好む傾向があるため、食器とは別の場所に水を置きます。また、複数箇所に水を設置することで、猫がいつでもアクセスできるようにします。
水の器の選択も重要です。多くの猫はひげが器の縁に触れることを嫌うため、幅広で浅い器を選びます。材質はステンレスや陶器が推奨され、プラスチック製は匂いや味が移りやすいため避けた方が良いでしょう。
水の鮮度を保つことは非常に重要です。水は少なくとも1日1回、可能であれば1日2回交換し、常に新鮮な状態を保ちます。器も定期的に洗浄し、細菌の繁殖を防ぎます。
多くの猫は動いている水を好むため、循環式の給水器の使用も効果的です。これらの装置は水を常に循環させ、新鮮で酸素を含んだ水を提供します。また、流れる水の音が猫の飲水欲求を刺激する効果もあります。
水の温度も考慮すべき要素です。多くの猫は室温またはやや冷たい水を好みますが、個体差があるため、愛猫の好みを観察して調整します。
味の工夫も有効な場合があります。少量の鶏ガラスープ(無塩)やマグロの茹で汁を加えることで、水の魅力を高めることができます。ただし、塩分や添加物の多いものは避け、獣医師と相談の上で実施することが重要です。
急性腎障害との違い|こんなときは緊急受診を

急激な症状変化:見逃してはいけない危険信号
急性腎障害は慢性腎臓病とは全く異なる病態で、迅速な対応が生命を左右する緊急事態です。飼い主は急性腎障害の症状を正確に把握し、適切なタイミングで緊急受診の判断をする必要があります。
急激な嘔吐の頻発は最も注意すべき症状のひとつです。慢性腎臓病でも嘔吐は見られますが、急性腎障害では短時間で連続的に嘔吐を繰り返すことが特徴的です。特に、黄緑色の胆汁様の嘔吐物や、コーヒー色の血液を含む嘔吐物が見られた場合は、直ちに緊急受診が必要です。
無尿または著しい尿量の減少も危険な症状です。通常であれば1日に何回かトイレに行く猫が、12時間以上全く尿をしない、または極端に少ない量しか尿をしない場合は、急性腎障害を強く疑います。尿が全く出ない状態は腎後性急性腎障害の可能性もあり、数時間以内の治療が必要です。
活動性の急激な低下も重要な症状です。慢性腎臓病では徐々に元気がなくなりますが、急性腎障害では急激にぐったりとし、ほとんど動かなくなることがあります。呼びかけに反応が鈍い、立ち上がろうとしない、隠れて出てこないなどの症状が急に現れた場合は緊急事態です。
食欲の完全消失も警告信号です。慢性腎臓病では食欲の波がありますが、急性腎障害では突然完全に食べ物を拒否するようになります。好物を提示しても全く興味を示さない、匂いを嗅ぐことすらしない場合は要注意です。
体温の異常も重要な症状です。急性腎障害では低体温(36℃以下)または高熱(40℃以上)を示すことがあり、いずれも生命に関わる状態です。猫の正常体温は38〜39℃程度であり、これから大きく外れる場合は緊急受診が必要です。
急性腎障害の主な原因
急性腎障害の原因を理解することは、予防と早期発見に重要です。原因は大きく腎前性、腎性、腎後性の3つに分類されます。
腎前性急性腎障害は、腎臓への血流が著しく減少することが原因です。重度の脱水、出血、ショック状態、心疾患による心拍出量の低下などが原因となります。特に高齢猫では、下痢や嘔吐による軽度の脱水でも急激に腎機能が悪化することがあります。
腎性急性腎障害は、腎臓そのものが直接的な損傷を受けることが原因です。最も頻度が高いのは毒性物質による中毒で、リリー(百合科植物)、エチレングリコール(不凍液)、NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)、造影剤などが代表的な原因物質です。また、重篤な感染症や敗血症も腎臓に直接的な損傷を与えることがあります。
腎後性急性腎障害は、尿路の閉塞が原因で起こります。尿道結石による尿道閉塞、膀胱や尿管の腫瘍による圧迫、前立腺疾患(去勢していないオス猫)などが原因となります。これらの状態では、腎臓で作られた尿が体外に排出されず、腎臓に逆流することで腎機能が急激に悪化します。
薬物による急性腎障害も重要な原因のひとつです。抗生物質(アミノグリコシド系、テトラサイクリン系)、利尿薬、ACE阻害薬などの医薬品も、不適切な使用により急性腎障害を引き起こす可能性があります。特に脱水状態での薬物投与は危険性が高くなります。
緊急受診の判断基準と対応
急性腎障害が疑われる症状が現れた場合の緊急受診の判断基準を明確に理解しておくことが重要です。
以下の症状が一つでも認められた場合は、時間を問わず直ちに動物病院を受診する必要があります:12時間以上の完全無尿、激しい嘔吐の連続、意識レベルの著しい低下、呼吸困難、体温の著しい異常(36℃以下または40℃以上)、痙攣や運動失調、粘膜の色の異常(青白い、黄色い)。
また、以下の症状が複数組み合わさって現れた場合も緊急受診が必要です:急激な食欲消失と嘔吐、尿量の著しい減少と元気消失、脱水症状と意識低下、異常な姿勢(背中を丸めて動かない)と痛みの表現。
緊急受診前の応急処置として、猫を安静に保ち、体温の保持に努めます。毛布やタオルで体を包み、静かで暖かい場所に移動させます。ただし、無理に水や食事を与えることは避け、嘔吐のリスクを高める可能性があるため控えます。
動物病院への連絡では、症状の詳細、発症のタイミング、可能性のある毒性物質への接触、最近の薬物投与歴などを正確に伝えます。これらの情報は診断と治療方針の決定に重要な役割を果たします。
輸送時は、猫が安定した姿勢を保てるよう配慮し、振動や騒音を最小限に抑えます。可能であれば、最近の尿や嘔吐物のサンプルを持参することで、診断の助けとなります。
急性腎障害は時間との勝負であり、適切な治療により完全回復が可能な場合もあります。一方で、治療が遅れると不可逆的な腎損傷を引き起こし、慢性腎臓病へ移行したり、最悪の場合は生命に関わる結果となる可能性があります。そのため、疑わしい症状が見られた場合は、「様子を見る」よりも「念のため受診する」という姿勢が重要です。
よくある質問(FAQ)

Q:猫の腎臓病は治りますか?
この質問は腎臓病と診断された猫の飼い主から最も多く寄せられる質問です。残念ながら、慢性腎臓病を完全に治すことは現在の医学では不可能です。腎臓の組織は一度損傷を受けると再生することができず、失われた機能を回復することは困難だからです。
しかし、「治らない」ことと「何もできない」ことは全く異なります。適切な治療と管理により、病気の進行を大幅に遅らせ、猫の生活の質を維持しながら長期間の生存が可能です。実際に、早期に診断され適切な管理を受けた猫の多くは、診断後も数年間にわたって良好な生活を送っています。
急性腎障害の場合は状況が異なります。原因によっては完全な回復が可能で、適切な治療により正常な腎機能を取り戻すことができます。ただし、治療のタイミングが重要で、早期の診断と迅速な治療が回復の鍵となります。
治療の目標は「完治」ではなく、「共存」です。腎臓病と上手に付き合いながら、猫らしい生活を維持することが現実的で意義のある目標となります。
Q:ステージ1とステージ4では何が違うの?
IRISステージ分類における各段階の違いを理解することは、病気の進行度と治療方針を把握する上で重要です。
ステージ1では、血液検査のクレアチニン値はまだ正常範囲(1.6mg/dL未満)にありますが、尿検査や画像診断で腎臓の異常が検出されています。この段階では症状はほとんど現れず、猫は通常通りの生活を送っています。腎機能はまだ75%以上保たれており、適切な管理により長期間この状態を維持することが可能です。治療は主に食事管理と定期的な検査によるモニタリングが中心となります。
ステージ4では、クレアチニン値が5.0mg/dLを超え、腎機能は10%以下まで低下しています。多飲多尿、食欲不振、嘔吐、体重減少、貧血などの明らかな症状が現れ、生活の質は著しく低下します。尿毒症の症状も顕著で、生命に関わる状態です。治療は症状の緩和と苦痛の軽減が主体となり、積極的な支持療法や緩和ケアが必要になります。
両者の最も大きな違いは、残存腎機能の程度と症状の有無です。ステージ1では症状がないため病気の存在に気づきにくい一方、ステージ4では生活に大きな支障をきたす症状が現れます。また、治療に対する反応も異なり、ステージ1では治療効果が現れやすく進行を大幅に遅らせることができますが、ステージ4では治療効果は限定的で、症状の緩和が主な目標となります。
予後についても大きな違いがあります。ステージ1の猫は適切な管理により数年から十年以上の生存が期待できますが、ステージ4の猫の予後は数か月から1年程度と考えられています。
Q:療法食はいつから始めるべき?
療法食の開始タイミングは、多くの飼い主が悩む重要な問題です。一般的には、IRISステージ2の段階から療法食の導入が推奨されますが、個体の状態や検査結果により調整が必要です。
ステージ1の段階では、療法食の必要性は限定的です。この段階では通常の高品質なフードで十分であり、むしろ定期的な健康チェックと生活環境の整備が重要です。ただし、血液検査でリン値の上昇が見られる場合や、蛋白尿が認められる場合は、早期からの療法食導入が検討されます。
ステージ2になると、軽度の腎機能低下が血液検査で確認され、多飲多尿などの症状も現れ始めます。この段階から療法食を開始することで、腎臓への負担を軽減し、病気の進行を効果的に遅らせることができます。
ステージ3以降では、療法食は必須の治療法となります。この段階では明らかな症状が現れており、通常の食事では腎臓への負担が大きすぎるため、専用の療法食による栄養管理が不可欠です。
療法食の導入は段階的に行うことが重要です。急激な食事の変更は消化器症状を引き起こす可能性があるため、1週間から10日間をかけて徐々に混合比率を変更していきます。初日は従来のフードと療法食を9:1の割合で混合し、2〜3日ごとに療法食の比率を増やしていき、最終的に100%療法食に切り替えます。
療法食への適応が困難な場合は、複数のメーカーの製品を試したり、食事の温度や与え方を工夫したりすることで、受け入れを促進できる場合があります。それでも困難な場合は、通常のフードに腎臓病用のサプリメントを併用するなどの代替案も検討されます。
Q:皮下補液は自宅でできるの?
皮下補液の自宅実施は、腎臓病の猫の管理において重要な選択肢のひとつです。適切な指導を受けた飼い主であれば、自宅での皮下補液は十分実施可能で、多くのメリットがあります。
自宅での皮下補液の最大の利点は、猫のストレス軽減です。動物病院への移動や診察室での処置は多くの猫にとって大きなストレスとなりますが、慣れ親しんだ自宅環境での処置により、このストレスを大幅に軽減できます。また、通院の頻度を減らすことで、飼い主の負担も軽減されます。
自宅での皮下補液を行うためには、まず獣医師による十分な指導を受ける必要があります。針の刺し方、補液量の調整、異常時の対応などについて、実際に猫での実演を交えながら学習します。多くの場合、2〜3回の練習により基本的な手技を習得できます。
必要な器具は、輸液パック、輸液セット、針、消毒用品などで、動物病院から提供されます。補液量は通常50〜150ミリリットル程度で、猫の体重や脱水の程度により決定されます。処置時間は15〜30分程度で、猫がリラックスした状態で行うことが重要です。
自宅での皮下補液が適さない場合もあります。猫が極度に興奮しやすい、飼い主が手技に不安がある、感染のリスクが高い、重篤な状態で頻繁な調整が必要などの場合は、病院での処置が適しています。
安全性の確保のため、定期的な診察により効果と副作用をモニタリングし、異常が見られた場合は直ちに獣医師に相談することが重要です。また、補液の温度は体温に近づけ、清潔な環境で実施することも大切です。
まとめ:早期発見と継続ケアで猫のQOLを守る

猫の腎臓病は確かに深刻な疾患ですが、正しい知識と適切な管理により、愛猫の生活の質を維持しながら病気と共存することは十分可能です。この記事で解説した内容を踏まえ、腎臓病の管理における重要なポイントをまとめます。
早期発見が最も重要な要素です。定期的な健康診断、特に7歳以上の中高齢猫では年1〜2回の血液検査と尿検査を実施することで、症状が現れる前の段階での診断が可能になります。多飲多尿、食欲の変化、体重減少などの初期症状を見逃さず、気になる変化があれば早めに獣医師に相談することが重要です。
適切な治療の継続も不可欠です。食事療法、水分管理、薬物療法を組み合わせた包括的なアプローチにより、病気の進行を大幅に遅らせることができます。特に療法食は腎臓病治療の基盤となるため、猫が受け入れやすい製品を見つけ、継続的に与えることが重要です。
生活環境の整備も見逃せません。ストレスの少ない環境作り、適切な運動の確保、飲水環境の改善などにより、猫の全体的な健康状態を維持し、腎機能の保護に寄与します。
定期的なモニタリングにより、治療効果を確認し、必要に応じて治療方針を調整することも重要です。血液検査、尿検査、体重測定などを定期的に実施し、病気の進行度を把握しながら最適なケアを提供します。
飼い主の理解と協力が治療成功の鍵となります。病気の性質を正しく理解し、長期的な視点で猫と向き合うことで、多くの猫が腎臓病と診断された後も充実した生活を送ることができます。
最新の治療法の進歩も希望を与えてくれます。新しい腎保護薬の登場や、再生医療の研究進歩により、将来的にはより効果的な治療法が利用可能になる可能性があります。
猫の腎臓病は治らない病気である一方で、適切に管理すれば共に暮らせる病気でもあります。愛猫が腎臓病と診断されても諦めることなく、獣医師と連携しながら最適なケアを提供することで、猫らしい生活を長期間維持することが可能です。日々の小さな変化に注意を払い、愛情をもって向き合うことで、愛猫の生活の質を守り続けることができるのです。
