セキセイインコの「ジアルジア症」健康診断で見つかることが多い寄生虫【診断カルテ】

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はじめに

「元気そうだから大丈夫かな?」――3ヶ月の雄のセキセイインコを連れて健康診断に来られた飼い主様も、そんな気持ちで来院されました。羽の色つやもよく、食欲も体重も問題なし。ところが検査をしてみると「ジアルジア」という小さな寄生虫が見つかったのです。

セキセイインコの幼鳥にはよく見られる寄生虫で、特に春から夏にかけて発症が増える傾向があります。症状が出ないことも多く、飼い主様にとっては「まさかうちの子が」という驚きの結果になることも少なくありません。

ジアルジアとは?

ジアルジア(Giardia sp.)は鳥や哺乳類の腸内に寄生する原虫です。顕微鏡で見ると「栄養型(trophozoite)」と「シスト(cyst)」という2つの形態が確認できます。

人にも感染する可能性があるため、注意が必要です。

検査と診断

今回のセキセイインコでは、糞便検査やそのう(食道の一部)検査によってジアルジアが発見されました。ただしこの寄生虫は検査1回だけでは見つかりにくいことがあり、複数回の検査が必要になることもあります。

症状が軽い場合は無症状で経過しますが、重症になると以下の症状が見られることがあります。

こうした症状が出ると、命にかかわることもあるため早めの対応が大切です。

治療

治療にはメトロニダゾールという抗原虫薬を使用します。初期の段階であれば約70%のケースで駆除可能です。しかし薬だけでは不十分で、再感染を防ぐための環境対策も欠かせません。

ジアルジアのシストは消毒薬に強く、水のある環境では約2か月も生き残ることがあります。そのため、糞便から排泄されたシストが食事や水に混じると、再び体内に入り込んで感染を繰り返してしまうのです。

予防と環境対策

再感染を防ぐためには、生活環境の清掃と消毒が重要です。

乾燥に弱い性質を利用し、「清潔な飼育環境」を保つことが最大の予防になります。

まとめ

今回の症例のセキセイインコは元気に見えても、ジアルジアという寄生虫が潜んでいました。幼鳥に多く見られる病気で、人への感染の可能性もあるため、症状がなくても早めの駆除と環境対策が必要です。

「元気だから大丈夫」と思っていても、健康診断でしか分からない病気は少なくありません。大切な家族を守るためにも、定期的な検診を受けることをおすすめします。

オダガワ動物病院のご案内

当院では小鳥をはじめ、犬・猫・エキゾチックアニマルの診療を行っています。健康診断や寄生虫の検査・治療、飼育環境のアドバイスまで幅広く対応しております。
大切なご家族の健康を守るために、ぜひお気軽にご相談ください。

この記事を書いた人

鈴木 透

1959年生まれ。 1984年に北里大学獣医畜産学部獣医学科を卒業。学生時代から動物の病気や治療に強い関心を持ち、獣医師としての知識と技術を深めるべく、1986年には同大学大学院獣医畜産学部獣医学専攻を修了。大学院では小動物の臨床研究に携わり、実践的な診療スキルと基礎医学の両面から専門性を高めた。 その後、日本獣医生命科学大学にて研究生として在籍し、さらに高度な専門知識と研究経験を積む。臨床現場と学術の両方での経験を活かし、1991年、地域に根ざした獣医療を提供するために「オダガワ動物病院」を開設。以降、30年以上にわたり、飼い主と動物の信頼関係を大切にした診療を心がけ、多くの症例と向き合ってきた。