白い便が続いたセキセイインコ|膵臓の外分泌不全が疑われたケース【診断カルテ】

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はじめに

「うちの子、便が真っ白なんです…」
3歳の雄のセキセイインコを連れて、多摩区菅馬場から飼い主様が来院されました。2週間ほど前から白い便が続いており、体重も27gとやせ気味で心配になったとのことでした。

検査の流れ

まず、寄生虫や真菌(カビ)が関与していないか便を調べましたが、いずれも陰性でした。そこで特殊な染色検査を行いました。

診断について

膵臓には「外分泌機能」と呼ばれる、食べ物を消化する酵素を分泌する働きがあります。この機能が低下すると、便に未消化の成分が混じるようになります。

犬や猫、人では「TLI(トリプシン様免疫活性)」という血液検査で膵臓の外分泌不全を確認できますが、残念ながら鳥類専用の検査薬はまだ開発されていません。
そのため本症例では、便の検査と臨床所見から暫定的に「膵臓の外分泌不全」と診断しました。

治療と経過

治療として消化酵素を投与したところ、便はすぐに改善しました。しかし投薬を中止すると再び白い便が出るため、継続的な治療が必要であることが分かりました。

まとめと予防のポイント

セキセイインコにおける白い便の原因はさまざまで、感染症や肝臓疾患なども関与することがあります。本症例では膵臓の外分泌不全が疑われましたが、診断には限界があり、便の観察と治療反応をあわせて判断することが大切です。

「元気そうに見えるけれど便の色がおかしい」と感じたら、早めに受診することをおすすめします。特に長く続く白い便は要注意です。

オダガワ動物病院のご案内

当院では犬・猫だけでなく、小鳥やエキゾチックアニマルの診療にも対応しています。
セキセイインコの便の異常や食欲不振、体重減少など気になる症状があれば、お気軽にご相談ください。

この記事を書いた人

鈴木 透

1959年生まれ。 1984年に北里大学獣医畜産学部獣医学科を卒業。学生時代から動物の病気や治療に強い関心を持ち、獣医師としての知識と技術を深めるべく、1986年には同大学大学院獣医畜産学部獣医学専攻を修了。大学院では小動物の臨床研究に携わり、実践的な診療スキルと基礎医学の両面から専門性を高めた。 その後、日本獣医生命科学大学にて研究生として在籍し、さらに高度な専門知識と研究経験を積む。臨床現場と学術の両方での経験を活かし、1991年、地域に根ざした獣医療を提供するために「オダガワ動物病院」を開設。以降、30年以上にわたり、飼い主と動物の信頼関係を大切にした診療を心がけ、多くの症例と向き合ってきた。