セキセイインコの血便|メガバクテリウム感染が疑われたケース【診断カルテ】

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はじめに

「お迎えしたばかりなのに、便に血が混じっているんです…」
購入直後のセキセイインコを連れて来院された飼い主様は、とても不安そうでした。血便と聞くと、中毒や肝臓疾患など命にかかわる病気を連想される方も多いと思います。ところが、今回のセキセイインコは食欲もあり、元気に動き回っていました。

検査の流れ

まず便を顕微鏡で調べたところ、多数の赤血球(血液の成分)が確認されました。
さらに別の検体から、メガバクテリウム(現在の名称:マクロラブダス、鳥の消化管に寄生する酵母の一種)が見つかりました。これはセキセイインコやカナリアなどでよく報告される感染症です。

多くの赤血球が見られた
メガバクテリウムが確認された

診断と治療

血便の原因はさまざまですが、今回のケースではメガバクテリウム感染が強く疑われました。そのため駆除を目的とした治療を3日間続けるよう指示しました。
治療の結果、3日目には血便も消え、便中からメガバクテリウムも確認されなくなりました。

再発予防と経過

オーナー様と相談の上、予防目的で週1回・合計4回の追加治療を行うことになりました。その後1か月経過をみても、血便はなくメガバクテリウムも陰性でした。

まとめ

鳥の血便には、感染症から中毒、臓器疾患まで多様な原因があります。元気そうに見えても油断できません。今回のセキセイインコは、早期の発見と治療で良好な経過をたどることができました。
飼い主の皆さまには、便に血や異常が見られたら早めに受診することをおすすめします。

オダガワ動物病院のご案内

当院では犬・猫だけでなく、小鳥やエキゾチックアニマルの診療にも対応しています。便の異常や体調の変化が気になる場合は、お気軽にご相談ください。

この記事を書いた人

鈴木 透

1959年生まれ。 1984年に北里大学獣医畜産学部獣医学科を卒業。学生時代から動物の病気や治療に強い関心を持ち、獣医師としての知識と技術を深めるべく、1986年には同大学大学院獣医畜産学部獣医学専攻を修了。大学院では小動物の臨床研究に携わり、実践的な診療スキルと基礎医学の両面から専門性を高めた。 その後、日本獣医生命科学大学にて研究生として在籍し、さらに高度な専門知識と研究経験を積む。臨床現場と学術の両方での経験を活かし、1991年、地域に根ざした獣医療を提供するために「オダガワ動物病院」を開設。以降、30年以上にわたり、飼い主と動物の信頼関係を大切にした診療を心がけ、多くの症例と向き合ってきた。