ハムスターのアレルギー疾患【診断カルテ】

「最近、お腹の毛がごっそり抜けてしまって…」
川崎市にお住まいの飼い主さんは、2歳のジャンガリアンハムスターの男の子を心配そうに連れて来院されました。腹部の毛が抜けて赤くなり、背中以外は強いかゆみで落ち着きがなく、四肢や顔にも炎症やかき傷が見られました。

検査と診断

診察の結果、「アレルギー性皮膚疾患」が疑われました。
アレルギー疾患とは、体が本来なら害のない物質(アレルゲン)に過敏に反応し、強いかゆみや炎症を引き起こす病気です。ハムスターでは床材(木製チップ・牧草・土・新聞紙など)が原因となることが多いと考えられています。

治療方針

ハムスターのアレルギー治療の基本は2つです。


かゆみを抑える薬物療法

ステロイド、抗ヒスタミン薬、抗アレルギー薬などを使用します。
特にステロイドは効果的ですが、副作用(免疫抑制・体重変化など)が心配されます。
当院の経験では、専門書に記載されているほど副作用は多くなく、最小限の期間で投薬することでコントロール可能な場合が多いです。
なお、人用の軟膏やクリームをハムスターに塗ることは禁忌です。

原因アレルゲンの特定・環境改善

床材を変更して影響を調べることが多いですが、「これが一番良い」という決定的な答えはありません。
防腐剤の入っていないペレット(例:ハムスターセレクション)への切り替えを試すこともありますが、完全な「アレルギー対応食」ではありません。
今回の症例では、飼い主さんの希望により薬物治療は行いませんでした。しかし痒みが強いと夜も眠れず、生活の質を大きく下げてしまいます。薬の副作用ばかりに目が行き、主作用である「痒みを取る」ことを軽視すると、動物に苦しい生活を強いてしまう可能性があることも理解していただく必要があります。

この子は飼い主さまの希望で薬物療法を行いませんでした。しかし、ステロイド=「危険な薬」と誤解されがちで、本来の効果やメリットが正しく伝わらないまま動物がつらい症状に耐えてしまうケースもあります。大切なのは、副作用と主作用の両方を理解し、獣医師と相談してバランスをとることです。

予防と生活の工夫

ハムスターのアレルギーは完全に防ぐのが難しい病気です。
しかし、以下のような工夫で負担を減らせます。

・日々の健康チェックで「毛の状態」「皮膚の赤み」「痒がる様子」を観察する
・床材を定期的に交換し、異常があれば種類を見直す
・飼育環境の清潔を保つ
・症状が出たら自己判断せず、早めに動物病院へ相談する

オダガワ動物病院からのご案内

当院では犬猫だけでなく、ハムスターやウサギなどの小動物の皮膚病やアレルギーの診療にも対応しています。
「副作用が怖いから薬は全部ダメ」ではなく、「どう使えば安全で動物が楽になるか」を一緒に考えるのが私たちの役目です。

川崎市多摩区を中心に、麻生区・稲城市・登戸などからも多くの飼い主さまにご来院いただいています。
小さな体のハムスターだからこそ、少しの変化も見逃さず、お気軽にご相談ください。

この記事を書いた人

鈴木 透

1959年生まれ。 1984年に北里大学獣医畜産学部獣医学科を卒業。学生時代から動物の病気や治療に強い関心を持ち、獣医師としての知識と技術を深めるべく、1986年には同大学大学院獣医畜産学部獣医学専攻を修了。大学院では小動物の臨床研究に携わり、実践的な診療スキルと基礎医学の両面から専門性を高めた。 その後、日本獣医生命科学大学にて研究生として在籍し、さらに高度な専門知識と研究経験を積む。臨床現場と学術の両方での経験を活かし、1991年、地域に根ざした獣医療を提供するために「オダガワ動物病院」を開設。以降、30年以上にわたり、飼い主と動物の信頼関係を大切にした診療を心がけ、多くの症例と向き合ってきた。