うちの子の目が赤い!?ウサギの「角膜潰瘍」とは【診断カルテ】

飼い主さんの気づき

「2日前から急に涙が増えて、右目が赤くなってきたんです。」
そう話しながら来院されたのは、川崎市高津区にお住まいの飼い主さん。
2歳のネザーランドドワーフ(小型のウサギ)を連れてご来院されました。
元気はあるものの、まばたきの回数が多く、目を細めて痛そうにしています。

2才のネザーランドドワーフ

検査の結果:角膜潰瘍(かくまくかいよう)

診察の結果、「角膜潰瘍」と診断されました。
角膜潰瘍とは、目の表面(角膜)に傷がついた状態のこと。
ウサギは眼球が少し前に出ているため、物にぶつけたり、毛づくろいの際に自分の爪でひっかいてしまったりして、外傷性の角膜潰瘍を起こしやすい動物です。

検査の流れ

シルマーテアーテスト(涙の量を測る検査)

まずは涙の分泌量を測定しました。
このウサギさんの涙の量は 15mm/分(参考値:ウサギ約10mm/分)とやや多め。
痛みや刺激で涙が増えていることがわかります。

シルマーテアーテスト

フルオルテスト(角膜の傷を染める検査)

次に、角膜に傷があるかを確認する「フルオルテスト」を実施しました。
これは角膜を緑色に染める検査で、もし傷があれば染料がしみ込んで緑色に光ります。
検査の結果は陽性。角膜の表面に小さな傷が確認されました。

フルオルテスト

治療と経過

角膜の細胞を調べたところ、細菌感染はみられませんでした。
そのため、治療は ヒアレイン®(ヒアルロン酸点眼薬) を使用。
これは角膜の保湿と修復を促すお薬です。

点眼治療を続け、3日後の再診では傷はきれいに治癒していました。
今回は軽度で早期に対応できたため、手術などの必要はなく、飼い主さんもほっと一安心。

角膜潰瘍の治療点眼液、ヒアレイン®

再発防止と日常ケア

角膜潰瘍は再発しやすい病気です。
ウサギは毛づくろいや狭いケージ内での行動で目を傷つけることがあるため、以下の点に注意しましょう。

・ケージ内の角やワイヤー部分を確認し、目をこすらないようにする
・爪が伸びすぎないよう、定期的にカットする
・異常な涙や目の赤みが見られたら、早めに受診する

まとめ

ウサギの角膜潰瘍は、見た目には軽く見えても痛みが強く、悪化すると失明の恐れもあります。
「涙が多い」「まばたきが増えた」などの小さな変化も、早めの受診が大切です。

オダガワ動物病院より

オダガワ動物病院では、ウサギをはじめとするエキゾチックアニマルの診療にも対応しています。
眼科検査や顕微鏡による診断を行い、できるだけ動物に負担の少ない治療を心がけています。
目の異常に気づいた際は、お気軽にご相談ください。

この記事を書いた人

鈴木 透

1959年生まれ。 1984年に北里大学獣医畜産学部獣医学科を卒業。学生時代から動物の病気や治療に強い関心を持ち、獣医師としての知識と技術を深めるべく、1986年には同大学大学院獣医畜産学部獣医学専攻を修了。大学院では小動物の臨床研究に携わり、実践的な診療スキルと基礎医学の両面から専門性を高めた。 その後、日本獣医生命科学大学にて研究生として在籍し、さらに高度な専門知識と研究経験を積む。臨床現場と学術の両方での経験を活かし、1991年、地域に根ざした獣医療を提供するために「オダガワ動物病院」を開設。以降、30年以上にわたり、飼い主と動物の信頼関係を大切にした診療を心がけ、多くの症例と向き合ってきた。