うちの子、なんだか見えにくそう… 7歳のうさぎに見つかった白内障の話【診断カルテ】

「最近、暗いところでぶつかるようになってきて…」
そう話してくださったのは、川崎市多摩区にお住まいの飼い主さん。
7歳半になる男の子のうさぎが、ある日から動きが少しぎこちなくなり、夜になると家具にぶつかることが増えたそうです。

「年齢のせいかな?」と思いつつも心配で、オダガワ動物病院に来院されました。

診察・検査の結果:白内障の初期を発見

診察では、右目の水晶体(=レンズ部分)に白い濁りが確認されました。
これが「白内障(はくないしょう)」と呼ばれる状態です。
白内障は、水晶体の中のたんぱく質が変化し、光が通りにくくなることで視力が低下してしまう病気です。

うさぎの場合、加齢に伴う発症も多く、近年は10歳近くまで長生きする子も増えたことで、白内障の診察件数も増えています。

この子は2年前に白内障と診断され、現在も月に1回の定期検査を続けています。
幸い、右目の白濁は進行しておらず、視力も生活に支障がない程度で維持されています。

治療方針:進行を抑えるための定期検査

白内障を完全に治す方法は手術しかありません。
しかし、現時点ではうさぎの白内障手術に対応している動物病院は少なく、当院でも外科手術は行っていません。

また、ヒト用の白内障点眼薬(ピノレキシン点眼)は一部で使用報告がありますが、角膜潰瘍(かくまくかいよう)という目の表面が傷つく副作用の可能性もあるため、現在は使用を控えています。

白内障の一部には、エンセファリトゾーン症(E. cuniculi)という寄生原虫感染が関与するケースも知られていますが、駆虫薬を投与しても白内障が改善するわけではありません。

定期通院で守る“見える暮らし”

このうさぎは現在、月1回の眼科検査を続けています。
目的は、白内障が原因で起こる水晶体性ブドウ膜炎(すいしょうたいせいぶどうまくえん)や緑内障の早期発見です。

白内障が進行すると、水晶体の中身が漏れ出し、炎症を起こすことがあります。
これを放置すると痛みを伴い、失明につながるリスクもあります。

幸いこの子は、白濁が進まず、日常生活も大きく変わっていません。
暗い場所では見えにくくなるため、「家具の配置を変えない」「いつも通りの環境を保つ」ことで、安心して生活できるようご家庭でも工夫されています。

飼い主さんへのアドバイス:早期発見と定期検査が大切

白内障はゆっくり進行するため、最初のうちは気づかれにくい病気です。
「少し動きが鈍い」「段差でつまずく」「目の色が白っぽい」など、小さな変化を感じたら、早めにご相談ください。

特にシニア期(6歳以上)のうさぎは、定期的な眼科チェックが進行防止の鍵となります。

オダガワ動物病院のご案内

当院では、うさぎ・ハムスター・フェレットなどのエキゾチックアニマル診療も行っています。
目の異常や白内障の早期発見のため、定期的な健康チェックをおすすめしています。

少しの異変でもお気軽にご相談ください。

この記事を書いた人

鈴木 透

1959年生まれ。 1984年に北里大学獣医畜産学部獣医学科を卒業。学生時代から動物の病気や治療に強い関心を持ち、獣医師としての知識と技術を深めるべく、1986年には同大学大学院獣医畜産学部獣医学専攻を修了。大学院では小動物の臨床研究に携わり、実践的な診療スキルと基礎医学の両面から専門性を高めた。 その後、日本獣医生命科学大学にて研究生として在籍し、さらに高度な専門知識と研究経験を積む。臨床現場と学術の両方での経験を活かし、1991年、地域に根ざした獣医療を提供するために「オダガワ動物病院」を開設。以降、30年以上にわたり、飼い主と動物の信頼関係を大切にした診療を心がけ、多くの症例と向き合ってきた。