
「いつもならごはんの時間になると飛んでくるのに、今日は全然食べてくれない…」
愛猫がごはんを食べない姿を見ると、飼い主さんは誰でも不安になります。様子を見ていていいのか、すぐに病院へ連れて行くべきなのか、判断に迷う方も多いでしょう。
猫は体が小さく、犬や人間と比べて絶食による体への影響が早く現れる動物です。特に肝臓への負担が大きく、食べない時間が長引くと「肝リピドーシス(脂肪肝)」という命に関わる病気を引き起こすこともあります。
この記事では、猫が食べない時の判断基準について、何日まで様子を見られるのか、年齢別の受診目安、すぐに病院へ行くべき危険なサイン、食欲不振の主な原因、家庭でできる確認ポイント、動物病院での検査内容、受診までの間にできる対応を詳しく解説します。大切な家族の命を守るために、正しい知識を身につけましょう。
猫が食欲不振|何日食べないと病院?

まず最初に、多くの飼い主さんが最も知りたい「どのくらい食べなければ病院へ行くべきか」という判断基準についてお伝えします。
結論から言うと、成猫であれば24時間以上、子猫や高齢猫であれば半日から1日食べない場合は受診を検討すべきです。
ただし、これはあくまで目安であり、猫の様子によってはもっと早く受診が必要なケースもあります。以下、年齢別に詳しく見ていきましょう。
成猫の場合の目安
健康な成猫(1歳〜7歳程度)の場合、24時間以上食べない状態は注意が必要です。丸一日食事を取らない状態は、猫にとって決して軽視できません。この時点で、なぜ食べないのか原因を探り始める必要があります。元気があり、水は飲んでいる、排泄も正常であれば、もう少し様子を見ることもできますが、注意深く観察を続けてください。
48時間以上食事を取らない状態になると、かなり危険な状況です。この段階になると、体内のエネルギー源が枯渇し始め、肝臓が脂肪を分解してエネルギーを作ろうとします。しかし猫の肝臓はこの処理が苦手で、脂肪肝を引き起こすリスクが高まります。脂肪肝は放置すると黄疸や肝不全につながり、命に関わる状態になります。そのため、48時間以上食べない場合は、たとえ元気そうに見えても必ず動物病院を受診してください。
3日間全く食べていない状態は緊急事態です。すでに体に深刻な影響が出ている可能性が高く、一刻も早い治療が必要です。夜間や休日であっても、救急対応している動物病院を探して受診してください。
子猫・高齢猫の場合
子猫(1歳未満)と高齢猫(7歳以上、特に10歳以上)は、成猫よりも体力の余裕が少なく、絶食による影響が早く現れます。
生後2〜3ヶ月の子猫は、半日(12時間程度)食べないだけでも低血糖を起こすリスクがあります。子猫の体は小さく、エネルギーの貯蔵量が少ないためです。低血糖になると、ぐったりする、体温が下がる、けいれんを起こすなどの症状が現れ、最悪の場合は命を落とすこともあります。子猫が半日以上食べない、元気がなくぐったりしている、体が冷たい、鳴き声が弱々しいといった状態であれば、すぐに受診してください。特に生後2ヶ月未満の子猫の場合は、数時間食べないだけでも危険な状態になることがあります。迷ったら早めに受診することをお勧めします。
7歳以上の猫は、人間で言えば中高年です。10歳を超えると高齢期に入り、腎臓や甲状腺、糖尿病などの慢性疾患を抱えていることも多くなります。高齢猫が食べない場合、背景に重大な病気が隠れている可能性が高いため、丸1日(24時間)食べない場合は受診を検討しましょう。元気がない、隠れるなどの症状があればすぐ受診、持病がある場合は半日でも受診を検討してください。特に腎臓病や糖尿病など、定期的な管理が必要な病気を持っている猫の場合、食欲不振は病状の悪化を示すサインかもしれません。かかりつけの動物病院に早めに相談しましょう。
水を飲まない場合は緊急性が高い
食べ物だけでなく、水を飲まない場合は、さらに緊急性が高まります。
猫は元々水をあまり飲まない動物ですが、それでも体の機能を維持するためには水分が不可欠です。食事を取らず、さらに水も飲まない状態が続くと、急速に脱水が進みます。脱水は血液の循環が悪くなる、腎臓への負担が増大する、体温調節ができなくなる、意識レベルの低下といった深刻な状態を引き起こします。
食事を取らず、かつ水も飲まない状態が12〜24時間続いている場合は、年齢に関わらずすぐに動物病院を受診してください。特に嘔吐や下痢を伴っている場合は、さらに脱水が進むため一刻を争います。
すぐ病院に行くべき危険サイン

食欲不振に加えて、以下のような症状が見られる場合は、何日食べていないかに関わらず、すぐに動物病院を受診してください。これらは体に深刻な異常が起きているサインです。
元気がない・ぐったりしている
普段は活発な猫が、動こうとしない、呼んでも反応が鈍い、寝てばかりいるという場合は要注意です。猫は本能的に弱った姿を隠そうとする動物なので、明らかに元気がないとわかる状態は、相当体調が悪い証拠です。ぐったりして動かない、呼びかけても反応しない、目に力がない、体がだらんとしているといった様子が見られたら危険です。
隠れる・じっとしている
猫がいつもと違う場所に隠れる、クローゼットの奥やベッドの下から出てこない、部屋の隅でじっとしているといった行動も、体調不良のサインです。野生の名残で、猫は体調が悪い時に外敵から身を守るため隠れる習性があります。普段は人懐っこい猫が急に隠れるようになった場合は、痛みや不快感を感じている可能性が高いでしょう。
嘔吐している
食欲不振に加えて嘔吐がある場合は、消化器系の問題、異物誤飲、腎臓病、膵炎など、様々な病気の可能性があります。特に何度も繰り返し吐く、吐いた物に血が混じっている、黄色や茶色の液体を吐く、吐こうとしているのに何も出ない(空嘔吐)といった嘔吐は危険です。1日に3回以上嘔吐する、または24時間以上嘔吐が続く場合は、必ず受診してください。
下痢がある
食欲不振と下痢が同時に起きている場合、感染症、食中毒、炎症性腸疾患、膵炎などが考えられます。下痢による脱水も急速に進むため、水のような下痢、血便が出ている、1日に何度も下痢をする、便に粘液や異常な色が見られるといった場合は早急な受診が必要です。
呼吸が荒い・苦しそう
猫は通常、静かに呼吸します。口を開けて「ハッハッ」と息をする、呼吸が速い、お腹が大きく上下するといった様子は、呼吸困難のサインかもしれません。考えられる原因は、心臓病、肺の病気、貧血、発熱、痛みなど様々です。呼吸の異常は命に直結するため、すぐに動物病院へ連れて行ってください。移動中も注意深く様子を見守り、状態が悪化したら途中でも獣医師に連絡を入れましょう。
よだれが出る
猫が大量によだれを垂らしている場合、口の中のトラブル、中毒、吐き気などが考えられます。口内炎や歯肉炎で痛みがある、異物が口や喉に詰まっている、有毒な植物や薬品を舐めた、腎不全などで尿毒症を起こしているといった可能性があります。よだれが止まらない、口の周りが濡れている、よだれに血が混じっているといった場合は、早めの受診が必要です。
体重が急に減った
見た目で痩せたとわかる、抱っこした時に骨が目立つようになった、首の後ろの皮膚がたるんでいるといった変化は、数日間の食欲不振による体重減少かもしれません。猫は体が小さいため、わずかな体重減少でも体への影響が大きくなります。特に元々の体重の10%以上減少している場合(例:5kgの猫が4.5kg以下になった)は、深刻な状態です。
黄疸が出ている
目の白い部分や歯茎、耳の内側が黄色っぽくなっている場合、黄疸の可能性があります。黄疸は肝臓や胆道系の病気、溶血性貧血などで起こり、食欲不振と黄疸が同時に見られる場合は、肝リピドーシス(脂肪肝)の可能性も考えられます。黄疸は重症のサインなので、気づいたらすぐに受診してください。
以下のチェックリストで、1つでも当てはまる項目があれば、すぐに動物病院を受診しましょう。24時間以上何も食べていない(子猫・高齢猫は12時間)、水を飲まない、ぐったりして元気がない、隠れて出てこない、嘔吐を繰り返している、下痢をしている、呼吸が荒い・苦しそう、よだれが大量に出ている、目や歯茎が黄色い、急に痩せた、けいれんや震えがある、発熱している(耳や体が熱い)といった症状です。複数の症状が同時に出ている場合は、さらに緊急性が高まります。迷わず受診してください。
猫が食欲不振になる主な原因

猫が食べなくなる原因は多岐にわたります。軽いストレスから命に関わる病気まで、様々な可能性があります。ここでは、食欲不振の主な原因について詳しく解説します。
ストレス
猫は環境の変化に敏感な動物で、ストレスによって食欲が落ちることがよくあります。
引っ越しをした、部屋の模様替えをした、新しい家具を置いた、工事の音がする、フードボウルやトイレの位置を変えたといった環境の変化は、猫にとって大きなストレスとなります。猫は縄張り意識が強く、自分のテリトリーが変わることを嫌います。新しい環境に慣れるまで、1週間程度食欲が落ちることもあります。ただし、元気はあって水は飲んでいる、数日で食欲が戻り始めるようであれば、様子を見ても良いでしょう。
知らない人が家に来ると、猫は警戒して隠れたり、ストレスを感じたりします。特に長期間の来客(親戚の宿泊など)、大人数での集まり、子供が遊びに来た、業者が頻繁に出入りしたといった場合、食欲が落ちることがあります。通常は来客が帰れば食欲も戻りますが、強いストレスを受けた場合は数日かかることもあります。
新しい猫や犬を迎えた、赤ちゃんが生まれたといった変化も、猫にとっては大きなストレスです。今まで独占していた飼い主の愛情を分け合わなければならない、縄張りを共有しなければならないといった状況は、猫を不安にさせます。多頭飼育の場合、相性が悪いとストレスから食欲不振になることもあります。
いつものフードを突然変えると、警戒して食べなくなることがあります。特に神経質な猫や、長年同じフードを食べてきた猫は、新しいフードを受け入れるのに時間がかかります。フードを切り替える時は、今までのフードに少しずつ新しいフードを混ぜ、1週間程度かけて徐々に慣らしていくのが理想的です。
口のトラブル
口の中に痛みがあると、食べたくても食べられない状態になります。
3歳以上の猫の約70%が歯周病を抱えていると言われています。歯茎が赤く腫れる、歯に歯石がついている、口臭がきついといった症状が見られます。痛みで硬いドライフードが食べられなくなり、ウェットフードなら食べられるということもあります。また、片側だけで噛んでいる、食べ方がぎこちないといった様子も見られます。歯周病が進行すると、歯が抜ける、顎の骨が溶ける、細菌が血流に乗って全身に回るなど、深刻な状態になります。
猫の口内炎は非常に痛みが強く、重症化すると食事がほとんど取れなくなります。原因は様々で、ウイルス感染(猫カリシウイルス、猫ヘルペスウイルス)、免疫の異常、腎臓病などが関係していることがあります。口内炎では、口を気にして前足で顔を擦る、よだれが多い、口臭が強い、口を開けたがらない、食べ物を口に入れても吐き出すといった症状が見られます。口内炎は治療が難しく、長期的な管理が必要になることも多い病気です。
魚の骨、おもちゃの破片、糸くずなどが口の中や喉に刺さったり引っかかったりして、痛みや不快感から食べられなくなることがあります。猫が口をパクパクさせる、前足で口を触る、よだれを垂らすといった様子が見られたら、口の中を確認してください。ただし、無理に取ろうとすると余計に悪化させることがあるので、確認できたら動物病院で処置してもらいましょう。
内臓疾患
内臓の病気は、食欲不振の代表的な原因です。
猫の死因で最も多いのが腎臓病です。特に高齢猫では非常に多く見られます。腎臓の機能が低下すると、体内の老廃物が排出できず、吐き気や食欲不振を引き起こします。腎臓病の初期症状として、水をよく飲むようになる、おしっこの量が増える、食欲が落ちる、体重が減る、毛艶が悪くなるといった変化が見られます。進行すると、嘔吐、貧血、口臭(アンモニア臭)などが現れます。腎臓病は完治が難しい病気ですが、早期発見・早期治療で進行を遅らせることができます。7歳を超えたら定期的な健康診断を受けることが大切です。
肝臓の病気も食欲不振を引き起こします。特に猫特有の病気である「肝リピドーシス(脂肪肝)」は、食べない状態が続くことで発症します。肝リピドーシスは、何らかの理由で食事を取らなくなった猫が、体脂肪をエネルギーに変えようとした結果、肝臓に脂肪が蓄積してしまう病気です。太っている猫ほどリスクが高く、数日食べないだけで発症することもあります。食欲不振、黄疸(目や歯茎が黄色くなる)、嘔吐、体重減少、元気消失といった症状が現れます。肝リピドーシスは治療が遅れると命に関わるため、食欲不振が続いたら早めの受診が必要です。
膵臓が炎症を起こす膵炎は、急性と慢性があり、急な食欲不振、嘔吐、腹痛(お腹を触られるのを嫌がる、背中を丸める)、下痢、発熱、元気消失といった症状が見られます。膵炎は診断が難しい病気ですが、血液検査や超音波検査で判明することがあります。治療には入院が必要になることも多く、早期発見が重要です。
胃や腸の炎症も食欲不振の原因になります。急性胃腸炎は、食べ物やストレス、細菌・ウイルス感染などで起こり、嘔吐や下痢を伴うことが多いです。慢性的な炎症性腸疾患(IBD)では、長期間にわたって食欲のムラ、嘔吐、下痢、体重減少などが見られます。
高齢猫に多い甲状腺機能亢進症は、甲状腺ホルモンが過剰に分泌される病気です。食欲が増すことが多い病気ですが、逆に食欲が落ちるケースもあります。その他、痩せてきた(食べているのに)、活動的になる・落ち着きがない、水をよく飲む、嘔吐や下痢、毛艶が悪いといった症状が見られます。血液検査で診断でき、治療法もいくつかあります。
インスリンの作用不足により血糖値が高くなる糖尿病は、肥満、去勢オス猫に多く見られます。初期は食欲が増えますが、進行すると食欲不振になることがあります。水をたくさん飲む、おしっこの量が増える、食べているのに痩せる、後ろ足の力が弱くなる(糖尿病性神経症)といった症状が現れます。
猫も高齢になるとがんのリスクが高まります。リンパ腫、消化器の腫瘍などが食欲不振を引き起こします。がんの症状は病気の種類や進行度によって異なりますが、徐々に食欲が落ちる、体重が減る、元気がなくなるといった変化が見られます。
異物誤飲
猫、特に若い猫は、遊んでいるうちにおもちゃの一部、糸、ゴム、ビニール袋などを飲み込んでしまうことがあります。異物が胃や腸に詰まると、突然の食欲不振、嘔吐(特に食後)、お腹を痛がる、便が出ない・または細くなる、元気がなくなるといった症状が現れます。
特に危険なのは、糸状の異物(糸、リボン、ビニールひも)です。腸に引っかかって腸を切ってしまうことがあり、緊急手術が必要になります。思い当たる場合は、すぐに動物病院を受診してください。「吐いて出てくるだろう」と様子を見ていると、腸閉塞や腸穿孔など命に関わる状態になることがあります。
感染症
ウイルスや細菌の感染も食欲不振の原因になります。猫風邪(猫ウイルス性鼻気管炎、猫カリシウイルス感染症)では、くしゃみ、鼻水、目やに、発熱などの症状とともに、食欲が落ちます。鼻が詰まると匂いがわからなくなり、食べなくなることもあります。
猫汎白血球減少症(猫パルボウイルス感染症)は、ワクチンで予防できる病気ですが、未接種の猫が感染すると重症化します。激しい嘔吐、下痢、高熱、食欲廃絶などの症状が現れ、致死率の高い病気です。
猫白血病ウイルス(FeLV)、猫免疫不全ウイルス(FIV)に感染すると、免疫力が低下し、様々な病気にかかりやすくなります。慢性的な食欲不振、体重減少、貧血などが見られます。
その他の原因
飲んでいる薬の副作用で食欲が落ちることもあります。特に抗生物質、鎮痛剤、抗がん剤などは、吐き気や食欲不振を引き起こすことがあります。薬を飲み始めてから食欲が落ちた場合は、獣医師に相談してください。
避妊・去勢手術をしていないメス猫は、発情期に食欲が落ちることがあります。発情中は鳴き声が大きくなる、落ち着きがない、お尻を上げるポーズをとるなどの行動も見られます。通常は1週間程度で終わり、食欲も戻ります。
夏の暑い時期は、猫も食欲が落ちることがあります。また、急激な気温の変化も食欲に影響します。ただし、あまりにも食べない場合や、元気がない場合は病気の可能性も考えてください。
家庭でできる確認ポイント

動物病院を受診するかどうか迷った時、家庭で以下のポイントを確認すると、猫の状態をより正確に把握できます。
トイレの確認
トイレの状態は、猫の健康状態を知る重要な手がかりです。
おしっこ(尿)については、量、色、においや様子を確認しましょう。量がいつもより多い場合は腎臓病、糖尿病、甲状腺機能亢進症の可能性があり、いつもより少ない・出ていない場合は脱水、尿路閉塞の可能性(特にオス猫は緊急事態)があります。色が濃い黄色や茶色なら脱水、赤やピンクなら血尿(膀胱炎、結石など)、透明に近い薄い色なら腎臓病の可能性が考えられます。甘い匂いがする場合は糖尿病の可能性があり、トイレで何度もしゃがむが出ないという様子は尿路閉塞(特にオス猫は緊急事態)のサインです。特にオス猫が尿を出せない状態は、24時間以内に命に関わる緊急事態です。すぐに動物病院を受診してください。
うんち(便)については、固さと形、色、その他の特徴を見ます。正常な便は適度な固さで、つまんでもトイレ砂がつかない程度です。軟便は形はあるが柔らかい状態、下痢は水っぽく形がない状態、便秘はコロコロと硬い・数日出ていない状態を指します。色が茶色なら正常、黒い(タール状)なら上部消化管からの出血の可能性、赤い血が混じるなら下部消化管の問題や大腸炎など、灰色・白っぽいなら肝臓や膵臓の問題が疑われます。その他、虫がいないか(白い米粒のようなもの、動くものなど)、粘液が混じっていないか、便の中に異物(糸、おもちゃの破片など)がないかも確認してください。食欲不振に加えて、下痢や便秘、血便などがある場合は、早めの受診が必要です。
食べ方の変化
食べる様子を観察することも大切です。フードに匂いを嗅ぐだけで食べない場合は口の中の痛みや吐き気がある可能性、全く興味を示さない場合は重度の体調不良の可能性、食べたそうにするが食べられない場合は口の痛みや異物の可能性があります。
どんなフードなら食べるかという点も重要です。ドライフードは食べないがウェットフードは食べる場合は歯や口のトラブル、好物のおやつなら食べる場合はそれほど深刻でない可能性(ただし油断は禁物)、何も食べない場合は深刻な状態が考えられます。
食べる時の様子として、片側だけで噛むなら歯の痛み、食べ物を落とすなら口の痛みや神経の問題、食べた後すぐ吐くなら食道や胃の問題・食べ過ぎなどが疑われます。
体温や脱水の簡易チェック
専門的な検査はできなくても、家庭である程度の健康チェックができます。
猫の正常体温は38.0〜39.2度程度です。正確には体温計で測りますが、耳の内側を触っていつもより熱い(発熱の可能性)、冷たい(低体温の可能性)という変化や、鼻を触って熱くて乾いている(発熱の可能性)といった変化で、おおよその判断ができます。健康な猫の鼻は少し湿っています。ただし、これらはあくまで目安です。正確な体温は動物用体温計で直腸温を測ります。
脱水のチェックには皮膚テント法が有効です。猫の首の後ろ(肩甲骨の間)の皮膚をつまんで持ち上げ、離した時の戻り方を見ます。すぐに戻れば正常、ゆっくり戻る(2秒以上)なら軽度の脱水、戻らない・または非常にゆっくりなら重度の脱水(緊急)と判断できます。
歯茎の確認も重要です。上唇をめくって歯茎を見て、色がピンク色なら正常、白っぽいなら貧血、赤いなら炎症や発熱、黄色いなら黄疸と判断します。湿り気については、適度に湿っているのが正常で、カサカサしている場合は脱水です。毛細血管再充満時間(CRT)も確認できます。歯茎を指で軽く押して白くなった部分が、離した後ピンク色に戻るまでの時間を測ります。正常は2秒以内で、それ以上かかる場合は循環不全や脱水の可能性があります。
目の確認では、目に力がない・落ち窪んでいる場合は脱水や重度の体調不良、瞳孔の大きさが左右で違う場合は神経の問題、目やにが多い場合は感染症が疑われます。
呼吸の確認では、猫が安静にしている時の呼吸数を数えます。正常は1分間に20〜30回程度で、40回以上なら何らかの異常(痛み、発熱、呼吸器疾患、心臓病など)が考えられます。お腹が大きく上下する、口を開けて呼吸する、呼吸音がするなどは異常のサインです。
行動の観察
普段との違いを見つけることが大切です。いつもの場所にいるか、普段通り動いているか、毛づくろいをしているか(具合が悪いと毛づくろいをしなくなる)、飼い主に反応するか、鳴き声はいつも通りかといった点を観察しましょう。猫は体調が悪くても隠そうとするため、小さな変化に気づくことが早期発見につながります。
動物病院ではどんな検査をする?

「病院に連れて行ったら、どんなことをされるんだろう」と不安に思う飼い主さんも多いでしょう。ここでは、食欲不振で受診した時の一般的な検査について説明します。
問診
まず獣医師が詳しく状況を聞きます。いつから食べていないか、水は飲んでいるか、嘔吐や下痢はあるか、トイレの様子(尿や便の状態)、その他の症状(元気がない、隠れるなど)、普段食べているフード、最近の環境の変化、持病や飲んでいる薬、ワクチン接種歴といった情報を整理しておくとスムーズです。可能であれば、最近の便や嘔吐物をビニール袋に入れて持参すると、診断の参考になります。
身体検査(触診・視診・聴診)
獣医師が猫の体を直接診察します。視診では全体の様子、目や歯茎の色、被毛の状態、体格などを見ます。触診では体を触って、痛みがないか、お腹に塊がないか、リンパ節が腫れていないか、脱水していないかなどを確認します。聴診では聴診器で心臓や肺の音を聞きます。体温測定では直腸温を測ります(正常は38.0〜39.2度)。口の中の確認では、歯や歯茎、舌、喉の状態を見ます。これらの検査は短時間で終わり、猫への負担も少ないです。
血液検査
食欲不振の原因を調べるために、多くの場合血液検査が行われます。
一般的な血液検査の項目として、血球計算(CBC)では白血球数(感染症や炎症があると増える)、赤血球数・ヘマトクリット値(貧血の有無)、血小板数(出血傾向の有無)を調べます。血液生化学検査では、腎臓の数値(BUN、クレアチニン)で腎臓病を診断、肝臓の数値(ALT、ALP、総ビリルビン)で肝臓病や黄疸を診断、血糖値で糖尿病や低血糖を診断、電解質で脱水や代謝異常を診断、総タンパク・アルブミンで栄養状態や肝臓・腎臓機能を評価します。症状に応じて、膵臓の酵素(膵リパーゼ)、甲状腺ホルモン(T4)なども測定します。
採血は通常、前足または後ろ足の静脈から行います。少量の血液を取るだけなので、数分で終わります。多くの検査は院内で当日中に結果が出ますが、一部の項目は外部の検査機関に依頼するため、数日かかることもあります。
レントゲン検査(X線検査)
お腹や胸のレントゲンを撮ることで、異物の有無、腸閉塞、腫瘤(しこり)、心臓や肺の異常、腹水や胸水の有無などがわかります。レントゲン撮影は数分で終わり、基本的に麻酔は不要です。ただし、じっとしていられない猫の場合、軽い鎮静をかけることもあります。
超音波検査(エコー検査)
お腹に超音波を当てて、内臓の様子を観察します。レントゲンでは見えにくい部分もエコーで確認できます。エコーでは、肝臓や腎臓の大きさや構造、膵臓の炎症、腸の動きや壁の厚さ、腹水の有無、腫瘤の詳細などがわかります。エコー検査も無麻酔で行え、痛みもありません。ただし、お腹の毛を少し刈る必要があることがあります。
その他の検査
症状や疑われる病気に応じて、尿検査(腎臓病、糖尿病、膀胱炎などの診断)、便検査(寄生虫、消化器の病気の診断)、ウイルス検査(猫白血病ウイルス(FeLV)、猫免疫不全ウイルス(FIV)などの感染の有無)、内視鏡検査(消化管の中を直接見る、全身麻酔が必要)、生検(組織の一部を取って顕微鏡で調べる)といった検査が追加されることもあります。
受診までの間にできること

動物病院の予約を取ったが診察まで時間がある、夜間で翌朝まで待たなければならないといった場合、家庭でできる対応を知っておくと安心です。ただし、以下はあくまで応急的な対応であり、獣医師の診察を受けることが最優先です。
無理に食べさせない
食べないからといって、無理やり口に入れたり、強制給餌をしたりするのは避けてください。吐き気がある、口の中が痛い、異物が詰まっているといった場合、無理に食べさせると状態を悪化させる可能性があります。また、強制給餌は誤嚥(気管に入ってしまうこと)のリスクもあり、肺炎を引き起こすこともあります。ただし、獣医師の指示のもと、低血糖予防のために少量の流動食を与えるよう指示される場合もあります。その場合は指示に従ってください。
好物を少量試してみる
食欲がないだけで元気がある場合、いつもの好物のおやつを少量与えてみる、ウェットフードを温めて香りを立たせる、鶏のゆで汁(味付けなし)をフードにかける、手から直接与えてみるといった方法を試してみても良いでしょう。少しでも食べたら、それ以上無理強いせず、様子を見ます。ただし、嘔吐している、下痢をしているといった場合は、食べ物を与えないほうが良いこともあります。迷ったら動物病院に電話で相談しましょう。
水分補給
脱水を防ぐため、水は常に新鮮なものを用意しておきます。水のボウルを数カ所に置く、流れる水を好む猫には水飲み用の噴水型給水器を試す、水を少し温める(ぬるま湯程度)、鶏のゆで汁(無塩)を薄めて与えるといった工夫ができます。ただし、水を飲もうとしない、飲んでもすぐ吐くという場合は、無理に飲ませず、早めに動物病院を受診してください。
静かな環境を用意する
ストレスが原因で食欲が落ちている場合、落ち着ける環境を作ることが大切です。静かで暗めの部屋を用意する、隠れられる場所(段ボール箱やキャットハウスなど)を作る、大きな音を立てない、必要以上に触ったり無理に遊ばせたりしない、他のペットや子供から離すといった配慮をしましょう。体調が悪い猫は、一人でゆっくり休みたいと思っています。そっと見守りながら、必要な時にすぐ対応できるようにしておきましょう。
温度管理と記録
体温調節がうまくできていない可能性があるため、室温を適温(20〜28度程度)に保ちます。夏はエアコンで涼しくする(ただし直接風が当たらないように)、冬は暖房やペット用ヒーターで暖めるといった対応が必要です。特に子猫や高齢猫は体温調節が苦手なので、注意が必要です。
動物病院を受診する際、食欲不振に気づいた日時、最後に食べた時間と量、水を飲んだ量、トイレの回数と状態(尿や便の量、色、固さなど)、嘔吐や下痢の回数と内容、その他気づいたことを記録しておくと診断に役立ちます。スマートフォンで便や嘔吐物の写真を撮っておくのも良いでしょう。
やってはいけないこと
人間用の薬を与えることは絶対に避けてください。人間用の風邪薬、痛み止め、胃腸薬などは、猫にとって猛毒です。ごく少量でも命に関わることがあります。特にアセトアミノフェン(解熱鎮痛剤)、イブプロフェン(消炎鎮痛剤)などは、猫には絶対に使用してはいけません。
インターネットで見つけた民間療法や、友人から聞いた方法を試すのも危険です。猫の体調や病気によっては、逆効果になることもあります。「明日になったら食べるかもしれない」と様子を見すぎて、取り返しのつかない状態になることもあります。迷ったら、動物病院に電話で相談するだけでも良いので、専門家の意見を聞きましょう。
まとめ|迷ったら早めの受診を

猫が食べない時の受診の目安や、注意すべきサインについて詳しく解説してきました。最後に、重要なポイントをまとめます。
成猫は24時間以上食べない場合は注意が必要で、48時間以上で受診を強く推奨します。子猫・高齢猫は半日〜1日食べない場合は受診を検討してください。水を飲まない場合は、年齢に関わらず12〜24時間で受診が必要です。
ぐったりして元気がない、嘔吐や下痢を繰り返す、呼吸が荒い・苦しそう、よだれが大量に出る、目や歯茎が黄色い、水も飲まないといった症状がある場合は、何日食べていないかに関わらず、すぐに受診してください。
猫は体が小さく、絶食に弱い動物です。特に太っている猫は、2〜3日食べないだけで肝リピドーシス(脂肪肝)という命に関わる病気を発症するリスクがあります。「様子を見よう」と思っているうちに、取り返しのつかない状態になることもあります。
「こんなことで病院に行っていいのかな」と迷うこともあるでしょう。しかし、猫は言葉で体調を伝えられません。飼い主さんが気づいて行動するしかないのです。迷った時は、まず動物病院に電話で相談してみてください。状況を説明すれば、受診が必要かどうかアドバイスをもらえます。早めに受診すれば、それだけ治療の選択肢も広がり、回復の可能性も高まります。
食欲不振は、様々な病気の初期症状です。日頃から猫の様子をよく観察し、小さな変化に気づくことが、早期発見・早期治療につながります。毎日の食事量や水の量をチェックする、トイレの状態を確認する、体重を定期的に測る、7歳を超えたら年1〜2回の健康診断を受けるといった習慣を持ちましょう。
大切な家族の健康を守るために、日々の観察と早めの対応を心がけましょう。何かおかしいと感じたら、迷わず動物病院に相談してください。あなたの「気づき」が、愛猫の命を救うかもしれません。









