猫の元気がない原因は?病院に行くべき症状と受診の目安

「いつもなら駆け寄ってくるのに、今日は全然動かない」「呼んでも反応が鈍い」「一日中寝てばかりいる」愛猫のこんな様子に、不安を感じていませんか?

猫は本能的に体調不良を隠そうとする動物です。野生では弱った姿を見せることが命取りになるため、具合が悪くてもギリギリまで普段通りに振る舞おうとします。そのため、飼い主が「元気がない」と気づいたときには、すでにかなり体調が悪化している可能性があります。

「様子を見ていいのか」「すぐに病院に連れて行くべきか」この判断は、猫の命を左右することもある重要な決断です。

この記事では、猫が元気がないときの受診の目安、見逃してはいけない危険サイン、家庭でできるチェック方法まで、獣医療の観点から詳しく解説します。大切な家族である愛猫を守るために、ぜひ最後までお読みください。

猫の元気がない|受診の目安【結論】

まずは結論からお伝えします。迷ったときの判断基準として、以下を参考にしてください。

半日から1日元気がないときは注意深く観察が必要です。食欲や排泄、呼吸の様子を確認しましょう。1日以上続く場合は動物病院への受診を検討してください。

ただし、食べ物を全く食べない、水を飲まない、呼吸が荒い・速い・口を開けて呼吸している、ぐったりして立ち上がらない、嘔吐や下痢を繰り返している、痙攣している、歯茎が白っぽいまたは黄色いといった症状が1つでもあれば、時間に関係なくすぐに受診してください。

猫の「元気がない」という症状は、軽い疲れから命に関わる重病まで、原因が非常に幅広いのが特徴です。しかし上記の危険サインがある場合は、緊急性が高いと判断してください。特に子猫や高齢猫、持病のある猫の場合は、体力の消耗が早いため、より早めの受診が必要です。

すぐ病院に行くべき危険サイン

ここからは、見逃してはいけない危険なサインについて、より詳しく解説します。以下の症状が見られたら、夜間や休日でも救急対応している動物病院を探して受診してください。

1. ぐったりして動かない

呼びかけても反応が鈍い、目を開けているが焦点が合っていない、立ち上がろうとしない。こうした状態は、猫の体が相当衰弱しているサインです。

ぐったりしている状態では、ショック状態、重度の脱水、低血糖、中毒、重篤な感染症などが考えられます。すでに生命の危機に瀕している可能性があるため、一刻を争う状況です。すぐに動物病院に連絡し、搬送してください。

2. 呼吸が荒い・速い

猫の正常な呼吸数は、安静時で1分間に20~30回程度です。これより明らかに速い、または口を開けて呼吸している、肩や腹部を大きく動かして呼吸している、呼吸のたびに「ゼーゼー」「ヒューヒュー」と音がする、舌や歯茎が青紫色になっているといった呼吸の異常が見られる場合は緊急事態です。

肺炎、胸水・腹水、心臓病、喘息、熱中症などが考えられます。呼吸困難は酸素不足を意味し、脳や臓器にダメージを与えます。特に口呼吸は猫にとって異常な状態で、緊急度が非常に高いサインです。移動中も猫に負担をかけないよう、キャリーに入れて静かに搬送しましょう。

3. 食欲がない・水を飲まない

24時間以上食べない状態は危険です。猫は絶食状態が続くと「肝リピドーシス(脂肪肝)」という命に関わる病気を発症するリスクがあります。特に太っている猫や中高齢の猫では、わずか2~3日の絶食でも危険です。

また、水を全く飲まない場合は脱水が急速に進行します。特に夏場や、嘔吐・下痢を伴う場合は、数時間で危険な状態になることもあります。食欲不振と水分摂取の低下が同時に起こっている場合は、非常に深刻な状態と考えてください。

4. 嘔吐・下痢を伴う

1日に何度も嘔吐する、水様性の下痢が止まらない、血便が出ている。これらの症状は、脱水や電解質バランスの崩れを引き起こし、急速に体力を奪います。特に嘔吐と下痢の組み合わせ、嘔吐と食欲不振の組み合わせ、下痢とぐったりしている状態の組み合わせは危険度が高くなります。

感染性胃腸炎、膵炎、腸閉塞(異物誤飲など)、中毒、腎不全などが考えられます。子猫の場合は特に脱水の進行が早いため、半日様子を見ただけでも危険な状態になることがあります。

5. 隠れて出てこない

猫は具合が悪いとき、本能的に暗くて狭い場所に隠れようとします。これは野生時代の名残で、敵に襲われないように身を守る行動です。

いつもは入らない場所(押し入れの奥、家具の隙間など)に入り込んで出てこない、呼んでも全く反応しない、引きずり出そうとすると唸る、または全く抵抗しないといった様子が見られたら要注意です。普段から隠れる癖のある猫でも、いつもと様子が違う場合は注意が必要です。食事の時間になっても出てこない、トイレに行った形跡がないなどの変化があれば、早めに受診しましょう。

6. その他の緊急サイン

痙攣・けいれんは脳や神経系の異常、中毒の可能性があります。失禁は神経障害や重度の衰弱を示します。体が冷たい場合はショック状態や体温低下が疑われます。目や皮膚が黄色い場合は黄疸で、肝臓や胆嚢の病気が考えられます。お腹が異常に膨れている場合は腹水、腫瘍、内臓破裂などの可能性があります。これらの症状は一刻を争う緊急事態です。迷わず動物病院に連絡してください。

猫の元気がなくなる主な原因

猫の元気がなくなる原因は多岐にわたります。ここでは、軽度なものから重篤なものまで、代表的な原因を解説します。

軽い原因(様子を見られることもある)

環境の変化によるストレス

猫は環境の変化に敏感な動物です。引っ越し、来客(特に知らない人や子供)、家族構成の変化(赤ちゃんが生まれた、ペットが増えたなど)、模様替え(家具の配置を変えた)、工事やリフォームの音、新しいペット用品(トイレ、ベッド、フードボウルなど)といった変化があった後、一時的に元気がなくなることがあります。

症状の特徴としては、隠れることが多くなる、食欲は多少あるがいつもより食べない、遊びへの反応が鈍いといったことが見られますが、呼吸は正常で水は飲んでいます。

環境ストレスの場合、通常は2~3日で慣れて元に戻ります。ただし1週間以上続く場合や、全く食べなくなった場合は受診が必要です。対策としては、猫が隠れられる安全な場所を確保する、大きな音を立てない、いつものルーティンを保つ、フェロモン製品(フェリウェイなど)の使用を検討するといったことが有効です。

疲れ・遊びすぎ

若い猫や活発な猫が、激しく遊んだ後にぐったりしていることがあります。これは運動後の疲労で、心配のないケースがほとんどです。数時間の休息で回復する、呼吸が落ち着けば元気になる、食欲は保たれている、水を飲んでいるといった場合は様子を見て大丈夫です。

ただし、普段と同じ程度の運動なのに異常に疲れている、回復に時間がかかるという場合は、心臓や呼吸器の問題が隠れている可能性もあります。

気温の変化

夏場、猫が日中ほとんど動かず、涼しい場所でじっとしているのは正常な行動です。しかしよだれを垂らしている、口を開けて呼吸している、ぐったりして反応が鈍い、嘔吐しているといった症状があれば熱中症の可能性があります。熱中症は命に関わるため、すぐに体を冷やして受診してください。

冬場や気温が低い日、猫が丸くなってじっとしているのも正常です。ただし震えている、体が冷たい場合は低体温症の可能性があります。

病気が疑われる原因

ここからは、獣医師の診察が必要な病気について解説します。

発熱・感染症

猫風邪(猫ウイルス性鼻気管炎、猫カリシウイルス感染症など)は、ウイルスや細菌による上部気道感染症です。ワクチン接種をしていない猫、多頭飼育環境の猫、免疫力が低下している猫に多く見られます。

症状としては、くしゃみや鼻水、目やに、発熱による元気消失、食欲低下(鼻が詰まって匂いを感じられないため)、口内炎(カリシウイルスの場合)などが現れます。軽症なら自然治癒することもありますが、食欲が落ちている、子猫や高齢猫の場合は受診が必要です。肺炎に進行すると命に関わります。

その他の感染症としては、猫汎白血球減少症(パルボウイルス)では激しい嘔吐・下痢と急激な衰弱が見られます。猫白血病ウイルス(FeLV)や猫免疫不全ウイルス(FIV)では慢性的な体調不良や貧血、免疫力低下による様々な感染症が起こります。

内臓疾患

慢性腎臓病は、猫の死因として非常に多い病気です。特に7歳以上の猫では注意が必要です。元気がない、疲れやすい、食欲不振、体重減少、多飲多尿(初期)から尿が出なくなる(末期)、嘔吐、口臭といった症状が現れます。腎臓病は進行性で、一度失われた腎機能は回復しません。早期発見・早期治療が重要です。

膵炎は、膵臓に炎症が起きる病気で、猫では診断が難しいことがあります。元気消失、食欲不振、嘔吐、腹痛(お腹を触られるのを嫌がる、背中を丸める)、下痢、発熱といった症状が見られます。重症化すると命に関わるため、早期の診断と治療が必要です。

肝臓病(肝リピドーシス、胆管肝炎など)では、元気消失、食欲不振(数日の絶食が引き金になることも)、黄疸(目や皮膚、歯茎が黄色くなる)、嘔吐といった症状が現れます。肝リピドーシスは太った猫が急に食べなくなったときに発症しやすく、数日で命に関わる状態になることがあります。

心臓病(肥大型心筋症など)は、猫の心臓病は無症状のまま進行することが多く、ある日突然悪化します。元気がない、疲れやすい、呼吸が速い・荒い、食欲低下、後ろ足の麻痺(血栓が詰まった場合)といった症状が見られます。中年齢以降の猫、特定の品種(メインクーン、ラグドール、ペルシャなど)では定期的な心臓チェックが推奨されます。

痛み

猫は痛みを隠すのが非常に上手です。元気がないのが実は痛みのサインだったということは珍しくありません。

歯の痛みでは、3歳以上の猫の約70%が歯周病を持っていると言われています。食べ方が変わる(片側だけで噛む、硬いものを避ける)、食べたそうにするが食べない、よだれが増える、口臭、元気がないといった症状が現れます。

関節の痛み(変形性関節症)は高齢猫に多く、実は非常に多くの猫が関節痛を抱えています。ジャンプしなくなった(高い所に登らない)、階段の上り下りを嫌がる、毛づくろいが減る(届かない部位がある)、動きが鈍い、寝ている時間が増えたといった症状が見られます。「年のせい」と見過ごされがちですが、痛み止めで生活の質が改善することがあります。

外傷・ケガとしては、外に出る猫ではケンカによる咬傷や交通事故、室内飼いの猫でも高所からの落下や家具に挟まれるといったことが起こります。外傷は見えない場所にあることもあります。猫の体を優しく触って、痛がる場所がないか確認しましょう。

異物誤飲・腸閉塞

猫が紐状のもの(毛糸、リボン、ゴムなど)や小さなおもちゃを飲み込んでしまい、腸に詰まることがあります。元気消失、食欲不振、嘔吐(繰り返す)、便秘または下痢、お腹を痛がるといった症状が現れます。腸閉塞は緊急手術が必要になることが多い、命に関わる状態です。猫が何かを飲み込んだ可能性がある場合は、すぐに受診してください。

泌尿器疾患(尿路閉塞)

特にオス猫で注意が必要なのが、尿道に結石や栓子が詰まって尿が出なくなる「尿路閉塞」です。トイレに何度も行くが尿が出ない(または数滴しか出ない)、トイレで鳴く(痛がっている)、元気がない、食欲不振、嘔吐、ぐったりしている(進行した場合)といった症状が見られます。尿路閉塞は24~48時間で命に関わる状態になります。「便秘かな?」と見間違えやすいので、トイレの様子をよく観察してください。

貧血

赤血球が減少し、体に酸素が十分運ばれなくなる状態です。元気がない、すぐ疲れる、歯茎が白っぽい、呼吸が速い、食欲低下といった症状が現れます。原因としては、ノミの大量寄生(子猫)、慢性腎臓病、猫白血病ウイルス(FeLV)、免疫介在性溶血性貧血、出血(外傷、腫瘍など)などがあります。

腫瘍・がん

高齢猫に多い原因です。腫瘍の種類や場所によって症状は様々ですが、共通して見られるのが「なんとなく元気がない」という漠然とした症状です。よくある猫の腫瘍としては、リンパ腫、乳腺腫瘍、口腔内腫瘍、肥満細胞腫などがあります。早期発見のためには、定期的な健康診断が重要です。

内分泌疾患

甲状腺機能亢進症は高齢猫に多い病気です。食欲はあるのに痩せる(初期)、元気がなくなる、食欲が落ちる(進行期)、落ち着きがない、嘔吐・下痢、多飲多尿といった症状が現れます。

糖尿病は肥満猫、中高齢の猫に多い病気です。多飲多尿、食欲はあるのに痩せる、元気消失(進行すると)、後ろ足の筋力低下(歩き方が変わる)といった症状が見られます。

家庭で確認できるチェックポイント

動物病院を受診する前、または様子を見る間に、家庭で確認できるポイントをご紹介します。これらのチェックは、獣医師に症状を伝える際にも役立ちます。

1. 呼吸数を確認する

猫が寝ているとき(完全にリラックスしている状態)の呼吸数を測ります。胸やお腹の上下動を観察し、1回の上下(吸って吐いて)を1回とカウントします。30秒間数えて2倍すれば1分間の呼吸数が分かります。

正常値は1分間に20~30回です。40回以上なら注意が必要で、60回以上または10回以下なら緊急です。遊んだ直後やストレスを感じているときは呼吸が速くなるので、必ず安静時に測定してください。

2. 体温の確認

正確な体温は直腸温を測る必要がありますが、家庭では耳の内側や肉球を触ることで概算できます。異常に熱い場合は発熱の可能性、冷たい場合は低体温やショックの可能性があります。猫の正常体温は38.0~39.2℃で人間より高いため、発熱している場合は耳や肉球だけでなく体全体が熱く感じます。

3. 脱水のチェック(皮膚テント法)

脱水は命に関わる状態です。猫の肩甲骨の間あたりの皮膚を優しくつまみ上げ、手を離して皮膚が元に戻る速さを観察します。正常なら即座に(1秒以内)元に戻ります。軽度の脱水では2秒程度かかり、中等度から重度の脱水では3秒以上、またはテント状に残ります。

その他の脱水サインとしては、歯茎が乾いている・ネバネバしている、目が落ち窪んでいる、元気がないといったことがあります。

4. 歯茎の色と毛細血管再充満時間(CRT)

歯茎の色は、循環状態や貧血の有無を示す重要なサインです。正常な歯茎の色はピンク色(人間と同じような色)です。

異常な色としては、白っぽい・蒼白(貧血、ショック、循環不全)、赤すぎる・充血(発熱、高血圧、中毒)、青紫色・チアノーゼ(酸素不足で緊急)、黄色・黄疸(肝臓・胆嚢の病気、溶血性貧血)があります。

毛細血管再充満時間(CRT)の測り方は、歯茎を指で優しく押して白くし、手を離してピンク色に戻るまでの時間を測ります。正常なら1~2秒です。3秒以上なら循環不全、即座に戻るなら血管拡張が疑われます。

5. トイレの確認

排泄物は健康状態を映す鏡です。毎日のトイレ掃除時にチェックしましょう。

尿のチェックポイントは、量が多すぎる・少なすぎる、色が赤い(血尿)・濃すぎる・薄すぎる、臭いがいつもと違う強い臭い、回数が何度もトイレに行くが少ししか出ないといったことです。

便のチェックポイントは、下痢・軟便、便秘(数日出ていない)、血便、異物が混じっている、色が黒い(タール便で消化管出血を示す)といったことです。

24時間以上排尿がない場合は緊急事態の可能性があります。

6. 行動の変化

活動性の変化として、いつもの遊びに反応しない、高い所に登らなくなった、寝ている時間が明らかに増えた、逆に落ち着きがなくウロウロし続けるといったことが見られます。

毛づくろいの変化として、全く毛づくろいしなくなった(痛み、極度の体調不良を示す)、過度な毛づくろい(皮膚のトラブル、ストレス、痛みを示す)、毛並みがボサボサ・脂っぽいといったことがあります。

社交性の変化として、隠れて出てこない、触られるのを嫌がるようになった、いつもと違う場所で寝る、飼い主にまとわりつく(痛みや不安)といったことが見られます。

鳴き方の変化として、いつもより大きな声で鳴く(痛み)、鳴き声が弱々しい、夜中に鳴き続ける(認知症、痛み、甲状腺機能亢進症など)といったことがあります。

7. 食欲・水分摂取の記録

元気がないときは、食欲と水分摂取を記録しておくと、獣医師への情報提供に役立ちます。いつから食べなくなったか、全く食べない・いつもより少ない、食べようとするが食べられない、水は飲んでいるか、好物を与えたらどうかといったことを記録しましょう。食欲は猫の健康バロメーターです。丸一日全く食べない場合は、必ず受診してください。

動物病院ではどんな検査をする?

「元気がない」という症状で受診した場合、動物病院では以下のような検査が行われることがあります。検査内容は症状や猫の状態によって異なります。

身体検査

獣医師による全身のチェックです。すべての診察の基本となります。体温、心拍数、呼吸数、体重(前回との比較)、歯茎の色、CRT、脱水の程度、リンパ節の腫れ、腹部の触診(痛み、腫瘤、腸の動きなど)、聴診(心臓、肺の音)、関節や筋肉の状態、皮膚や被毛の状態などを確認します。

血液検査

血液検査では、目に見えない体内の異常を数値として把握できます。

血球計算(CBC)では、白血球(感染症や炎症の有無)、赤血球(貧血の有無)、血小板(血液凝固機能)を調べます。

血液生化学検査では、腎臓の値(BUN、クレアチニン、SDMA)で腎臓病を、肝臓の値(ALT、ALP、ビリルビン)で肝臓病や黄疸を、血糖値で糖尿病や低血糖を、電解質で脱水や腎臓病を、膵臓の値(膵特異的リパーゼ)で膵炎を、総蛋白・アルブミンで栄養状態や肝臓・腎臓機能を、甲状腺ホルモン(T4)で甲状腺機能亢進症を調べます。検査結果は通常、院内で数十分から当日中に出ます。

レントゲン検査(X線検査)

体の内部構造を画像で確認します。心臓の大きさや形、肺の状態(肺炎、肺水腫など)、腹部臓器の大きさや位置、骨や関節の異常、異物の有無、腫瘍の有無(大きなもの)などが分かります。通常、鎮静なしで撮影できます。

超音波(エコー)検査

超音波を使って、臓器の内部構造をリアルタイムで観察します。レントゲンでは分からない詳細な情報が得られます。心臓の動きや弁の状態(心臓病の詳細診断)、肝臓・腎臓・膵臓・脾臓などの内部構造、腹水・胸水の有無、腫瘍の性状、膀胱や尿道の状態(結石など)、妊娠の有無などが分かります。痛みはなく、毛を刈って行います。

その他の検査

症状や状態に応じて、尿検査(腎臓病、糖尿病、尿路感染症、結石など)、便検査(寄生虫、消化不良、細菌感染など)、ウイルス検査(猫白血病ウイルス、猫免疫不全ウイルスなど)、血圧測定(高血圧、ショックなど)、心電図(不整脈などの心臓の電気的異常)、細胞診・組織検査(腫瘍の良性・悪性の判定)などが追加されることがあります。

受診までにできること

動物病院に連れて行くまでの間、家庭でできることを紹介します。

静かな環境で休ませる

猫が安心して休める環境を整えましょう。薄暗く静かな場所で、室温を適温に保ち(20~25℃程度)、ベッドや毛布で快適な寝床を用意し、他のペットや子供から離し、大きな音を立てないようにします。猫が隠れたがっている場合は、無理に引きずり出さず、そっと見守りましょう。ただし、呼吸や様子は定期的に確認してください。

水を用意する

脱水を防ぐため、新鮮な水をいつでも飲める場所に置きます。複数の場所に水を置く、猫が今いる場所の近くにも置く、器を変えてみる(陶器、ガラス、ステンレスなど)、水を少し温める(体温くらい)、水道水が嫌なら浄水やミネラルウォーター(軟水)を試す、流れる水を好む猫には蛇口から少し水を流すといった工夫をしてみましょう。ただし、嘔吐している猫に大量の水を飲ませると、さらに嘔吐することがあります。少量ずつ与えましょう。

無理に食べさせない

食欲がない猫に無理に食べさせようとすると、ストレスを与えたり、誤嚥(気管に入る)のリスクがあります。いつものフードを温めて香りを立たせる、ウェットフードを試す、好物(ちゅーるなど)を少量与えてみる、手から食べさせてみるといった工夫はできますが、24時間以上全く食べない場合は受診が必要です。無理に食べさせるより、早めに獣医師に相談しましょう。

様子を記録する

受診時に獣医師に正確に伝えるため、猫の様子を記録しておきましょう。いつから元気がないか、食欲・飲水量の変化、排泄の状態(尿・便の回数、量、性状)、嘔吐・下痢の有無(回数、内容物)、呼吸の様子、行動の変化、その他の症状などを記録します。スマートフォンで動画を撮影しておくと、獣医師に症状を正確に伝えられます。

移動の準備

動物病院への移動は、猫にとって大きなストレスです。頑丈で猫が飛び出さないキャリーバッグを用意し、上部が開くタイプが猫を入れやすいです。タオルや毛布を敷いて快適にし、冬は保温、夏は冷却パックで温度調節をします。移動中は車の運転を慎重にし、キャリーを安定した場所に置き、大きな音や揺れを避けます。呼吸困難の猫は、キャリーを立てず横にします。

やってはいけないこと

猫の体調が悪いとき、以下のことは絶対に避けてください。

人間の薬を与える

絶対にNOです。人間用の薬、特に解熱鎮痛剤(アセトアミノフェン、イブプロフェンなど)は、猫にとって猛毒です。ごく少量でも命に関わります。猫に有毒な一般的な薬として、風邪薬、痛み止め(ロキソニン、バファリンなど)、胃腸薬の一部、アロマオイル(猫は分解できない)などがあります。動物病院で処方された薬以外は、絶対に与えないでください。

無理に食べさせる・口に物を入れる

意識がもうろうとしている、嘔吐を繰り返しているときに無理に食べ物や水を与えると、気管に入って窒息や誤嚥性肺炎を起こす危険があります。

様子を見すぎる

「もう少し様子を見よう」と判断を先延ばしにして、手遅れになるケースは少なくありません。特に呼吸が苦しそう、ぐったりしている、嘔吐・下痢が止まらない、丸一日食べない、尿が出ないといった場合はすぐに受診してください。「大げさかな」と思っても、命に関わる病気が隠れていることがあります。迷ったら、動物病院に電話で相談するだけでも構いません。

猫を叱る

体調が悪くて粗相をしたり、いつもと違う行動をしても、猫を叱らないでください。猫は具合が悪いことを理解できず、さらにストレスを感じてしまいます。

まとめ|迷ったら早めに相談を

猫の元気がないとき、飼い主として最も大切なのは「猫の小さな変化に気づくこと」と「適切なタイミングで受診すること」です。

この記事の重要ポイント

受診のタイミングとしては、1日以上元気がない場合は受診を検討し、食べない・呼吸異常・ぐったりしている場合はすぐ受診してください。迷ったら、動物病院に電話で相談しましょう。

危険なサイン(見逃し厳禁)として、ぐったりして動かない、口を開けて呼吸している、24時間以上食べない、嘔吐・下痢が止まらない、尿が出ない、隠れて全く出てこないといったことがあります。

家庭でできることとして、呼吸数、歯茎の色、脱水をチェックし、静かな環境で休ませ、水を用意し、様子を記録しましょう。そして人間の薬は絶対に与えないでください。

猫は症状を隠す動物だからこそ

猫が「元気がない」と飼い主が気づいたとき、猫自身はすでにかなり辛い状態である可能性があります。野生の本能で弱みを見せない猫だからこそ、私たち飼い主が小さなサインを見逃さず、早めに行動することが大切です。

「様子を見ていたら手遅れになった」という後悔をしないために、少しでも心配なら動物病院に相談してください。「こんなことで来て良かったのかな」と思うくらいで、ちょうど良いのです。

かかりつけ医を持つことの大切さ

普段から定期的に通っているかかりつけの動物病院があると、いざというとき安心です。かかりつけ医のメリットとして、猫の普段の状態を把握している、飼い主との信頼関係ができている、カルテが残っているので過去の病歴が分かる、緊急時も相談しやすいといったことがあります。年に一度の健康診断やワクチン接種の機会に、かかりつけ医を見つけておきましょう。

夜間・休日の緊急時に備えて

猫の具合が悪くなるのは、平日の診療時間内とは限りません。事前に夜間・休日対応の動物病院の場所と連絡先、救急病院までの移動手段・所要時間、ペット保険の内容(夜間診療も補償されるか)を確認しておきましょう。スマートフォンに救急病院の電話番号を登録しておくと、いざというとき慌てずに済みます。

最後に

猫は私たちに多くの癒しと喜びをくれる、かけがえのない家族です。その猫が元気がないとき、頼れる存在は飼い主であるあなただけです。

この記事が、愛猫の健康を守る一助となれば幸いです。少しでも心配なことがあれば、遠慮せずに動物病院に相談してください。早期発見・早期治療が、猫の命を救うことに繋がります。

この記事を書いた人

オダガワ動物病院

犬・猫・小鳥・ウサギ・ハムスター・フェレット・モルモットの専門診療医院