【食欲不振のうさぎに隠れた病気】腎臓病と毛球症の症例|診断カルテ

飼い主さんの気づき

「昨日から大好きなペレットをまったく食べていないんです」
川崎市高津区から来院された飼い主さんは、不安そうにこう話してくれました。2歳半の元気いっぱいな雄のうさぎが、急に食欲を失ったとのこと。普段は食欲旺盛な子だけに、食べない様子に強い心配を覚えたそうです。

検査の流れ

診察では、体温や心音、口の中に大きな異常は見られませんでした。ただ、やや脱水があり、触診すると胃が普段よりふくらんでいる様子が確認されました。そこで、まずレントゲン検査を実施しました。
さらに飼い主さんの希望もあり、血液・生化学検査も同時に行いました。

右下レントゲン像
背腹レントゲン像

補足:血液・生化学検査とは?

血液中の成分を分析して、臓器(肝臓や腎臓など)の状態を調べる検査です。病気の早期発見に役立ちます。

診断の結果

レントゲンでは胃の中に“もやもや”とした影が見られました。これは毛球症(もうきゅうしょう)と呼ばれる、毛が胃にたまって詰まってしまう状態である可能性があります。毛球症は換毛期や繊維不足の食事、また他の病気の影響で起きやすい疾患です。

血液検査の結果、このうさぎでは腎臓の数値(BUN・クレアチニン)が高く、腎疾患が強く疑われました。つまり、腎臓病によるストレスで二次的に毛球症を発症してしまったケースと考えられました。

補足:毛球症とは?

うさぎは毛づくろいで飲み込んだ毛をうまく吐き出せず、胃腸にたまってしまうことがあります。胃腸の動きが止まると命に関わることもあるため、早めの対応が必要です。

治療の内容

今回は、栄養不足を防ぐために強制給餌を行い、胃腸の動きを促す薬(メトクロプラミド・モサプリド)を処方しました。
また、腎臓への負担を減らすために皮下補液(皮膚の下に水分を補う点滴)をご自宅で行えるよう、飼い主さんに方法をお伝えしました。

まだ若いうさぎで腎臓病が見つかるのは珍しく、予後が心配されますが、早期に治療を開始できたことは大きな意味があります。

予防と飼い主さんへのアドバイス

腎臓病や毛球症は、進行してからでは治療が難しくなることがあります。特に3歳を過ぎたうさぎでは、年2回程度の健康チェック(血液検査・レントゲン・エコー)を受けることをおすすめします。早期に病気を見つけることで、生活の質(QOL)を守ることにつながります。

獣医師からのメッセージ

オダガワ動物病院では、犬・猫だけでなく、うさぎ・小鳥・フェレット・ハムスターなど小動物の診療も行っています。
「ごはんを食べない」「元気がない」といった小さな変化でも、重大な病気のサインであることがあります。気になる症状がありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。

この記事を書いた人

鈴木 透

1959年生まれ。 1984年に北里大学獣医畜産学部獣医学科を卒業。学生時代から動物の病気や治療に強い関心を持ち、獣医師としての知識と技術を深めるべく、1986年には同大学大学院獣医畜産学部獣医学専攻を修了。大学院では小動物の臨床研究に携わり、実践的な診療スキルと基礎医学の両面から専門性を高めた。 その後、日本獣医生命科学大学にて研究生として在籍し、さらに高度な専門知識と研究経験を積む。臨床現場と学術の両方での経験を活かし、1991年、地域に根ざした獣医療を提供するために「オダガワ動物病院」を開設。以降、30年以上にわたり、飼い主と動物の信頼関係を大切にした診療を心がけ、多くの症例と向き合ってきた。