急に食欲を失ったうさぎと痙攣症状|急性毛球症の一例【診断カルテ】

飼い主が最初に気づいた変化

「昨日までは元気に牧草を食べていたのに、急に食欲がなくなってしまって…」
そんな不安な思いを抱えて来院された飼い主さん。4歳のうさぎは、普段は食欲旺盛で活発なのに、突然ごはんを口にしなくなったのです。

うさぎの食欲不振については、こちらの記事で詳しく解説しています。

来院時の検査と診断

来院時、体温は39.9℃とやや高めでしたが、心拍や呼吸に異常はなく、口腔内にも異常はありませんでした。
しかし、触診で胃の膨らみが確認され、レントゲン検査により「急性毛球症(胃内の毛玉による閉塞)」と診断しました。これは、毛が胃の出口付近に詰まり、消化物の通過が妨げられる状態です。

また、左前肢に軽度の位置感覚低下(プロプリオセプション低下)が見られましたが、環境の変化に敏感なうさぎでは一時的に起こることもあるため、経過観察としました。

食欲不振の背景に別の病気が隠れていた症例もあります。詳しくはこちらの診断カルテをご覧ください。

思わぬ経過:痙攣の出現

処置を行い一度は帰宅されましたが、翌日、再び来院。
飼い主さんによると、夜に3回ほど「痙攣のような発作」が見られたとのことです。過去の飼育歴では一度もなかった症状で、強い不安を感じて来院されました。

痙攣の原因としては、低血糖や中枢神経のトラブル(例:寄生虫E. cuniculiなど)が考えられます。本症例では基礎疾患を特定できませんでしたが、獣医師判断で薬剤を追加し、慎重に経過をみることになりました。

犬や猫でも痙攣は見られます。詳しくはこちらの記事をご覧ください。

治療と回復

3日目の来院時には、食欲・元気ともに回復が確認できました。
飼い主さんも「いつものように牧草を食べてくれて安心しました」と安堵の表情を見せていました。

急性毛球症と胃腸うっ滞の違い

うさぎでよく問題になるのは「胃腸うっ滞(GIスタシス)」です。これは腸の動きが低下して食べ物が停滞する状態で、多くは食欲低下や糞の減少として現れます。
一方、「急性毛球症」は、胃内の毛玉が物理的に出口を塞ぎ、消化物が通れなくなる点でより緊急性が高いのが特徴です。

うさぎの消化器疾患としては下痢もよく見られます。詳しくはこちらの記事をご覧ください。

予防のためにできること

急性毛球症は、毛玉が胃の出口を塞ぐことで発症します。日常的なブラッシングや、繊維質の多い食事(牧草中心)を与えることが予防に繋がります。
また、症状が急に悪化するケースもあり、当院の臨床経験では20例に1例程度は重症化し、命に関わることもあります。少しでも「食欲がない」「元気がない」と感じたら、早めに受診することが大切です。

FAQ

Q1. うさぎがどのくらい食べなかったら病院に行くべきですか?
A. 12時間以上まったく食べない場合は消化管の異常が疑われます。早期に受診してください。

Q2. 毛球症と胃腸うっ滞はどう違いますか?
A. 胃腸うっ滞は腸の動きが弱まって食べ物が停滞する状態、毛球症は毛玉が物理的に胃の出口を塞ぐ状態です。閉塞の有無が大きな違いです。

Q3. うさぎの痙攣はどんな原因がありますか?
A. 中枢神経疾患(例:E. cuniculi感染)、代謝異常(低血糖など)、ストレスなど様々です。いずれも早急な受診が必要です。

当院のご案内

オダガワ動物病院(川崎市登戸)は、犬・猫・うさぎ・小鳥・フェレットなどの小動物診療に対応しています。
一般診療、健康診断、予防医療まで幅広く行っております。気になる症状があればお気軽にご相談ください。

この記事を書いた人

鈴木 透

1959年生まれ。 1984年に北里大学獣医畜産学部獣医学科を卒業。学生時代から動物の病気や治療に強い関心を持ち、獣医師としての知識と技術を深めるべく、1986年には同大学大学院獣医畜産学部獣医学専攻を修了。大学院では小動物の臨床研究に携わり、実践的な診療スキルと基礎医学の両面から専門性を高めた。 その後、日本獣医生命科学大学にて研究生として在籍し、さらに高度な専門知識と研究経験を積む。臨床現場と学術の両方での経験を活かし、1991年、地域に根ざした獣医療を提供するために「オダガワ動物病院」を開設。以降、30年以上にわたり、飼い主と動物の信頼関係を大切にした診療を心がけ、多くの症例と向き合ってきた。